第6回ロスプリベンション講座

エイジスの阿部です。私は、ロスプリベンションコンサルタントとして、お取引先各社へのコンサルタントを担当しています。
防犯設備士、セキュリティ診断士、セキュリティプランナー、クライシスマネージャーとして、店舗の問題点や課題を発見して改善策をご提案しています。

先月号に引き続き、暑い中、ロスデータを基準に接客レベル、在庫比率のデータを携えて店舗巡回をしている中で、あることに気付きました。
来店客のアクセス方法がロス率に大きな影響があるということです。

アクセス方法とは、来店方法そして外と店舗(売場)のアクセスラインの数のことです。
前者の来店方法とは公共交通機関・車などで、広域から集客している店と自転車・歩きが主な店で違いがあります。
後者は出入口の数、1層か多層階か、エレベータ、エスカレータ、階段、隣接建物との通路などです。他にもロスに影響する様々なものを感じるきっかけがありましたが、長くなるので本題にいきます。

さてロスプリベンション(以下LPと呼ぶ)の取組事例を何回かに分けて紹介します

1. 取り組み事例(ロス分析)

どういうロスが出ているかを企業全体、店別、大・中・小分類別、単品別の金額と数量を見ます。

  • ロスは高いのか? 過去5年、直近、業種業界傾向と比較
  • 何が高いのか、低いのか? 化粧品、○○ブランド
  • 逆ロスは出ているのか? ビール、特定調味料

まず原因のつぶし込みに着手するのが「逆ロス」です。

多くの企業では出てはいけない、出るわけがないはずの逆ロスが、店舗・部門・単品の単位で出ることがあります。伝票締めの誤り、ビール等のケース・パック・バラの処理問題、納品形態によるもの、ハイアンドローでの値上げ売変の忘れ・漏れまたは確信犯などです。

逆ロスを放置することは逆ロス分が相殺され、不明ロスが実際より低く見えて、本当になくなっているものを低く評価してしまうことにつながります。

ルール通りに仕事をしていないアラートでもあります。

2. 取り組み事例(ロス分析)

たばこのロスは管理ミスまたは内部不正がほとんどです。
ロスの出方によっては内部不正が濃厚といえます。
発注、納品チェック、保管、棚卸にわたりチェックを行います。

3. 取り組み事例(ロス分析・被害品データ分析)

A店、B店で同じ部門でロスが高い場合でも、単品で見ると違いがあります。

店に巣食う常連客に混じる常習窃盗犯は、窃盗犯ごとに窃取品が違い、近隣店舗でも学生の多い店、高齢者の多い店など、盗られるものが明らかに異なってきます。両店とも髪染め、サポーターが盗られているが、A店は若者向けのもの、B店は高齢者向けのものなどです。

4. 取り組み事例(ロス分析・被害品データ分析)

万引被害報告をデータ化している企業は多いです。 特に大量窃盗被害の場合、大量なだけに被害が顕在化しやすいのです。
この顕在化している被害品データを分析することでさまざまなことが見えます。 被害品データもさまざまな収集方法があります。
一例として、大量窃盗犯が好む商品は似通っていることが挙げられます。 一部商品ではグループによって窃取品が違うこともあります。 これを盗るのはAグループだけ・・・など。 また窃盗犯に人気なものはどんどん変わっていくものと、変わらないものがあります。

5. 取り組み事例(ロス分析)

ロスの出方により、ミスまたは内部不正の手口を類推できることもあります。 コンサル先ではそうした見方もします。

6. 取り組み事例(店舗防犯診断)

コンサルの初期段階で店舗の防犯診断をします。これによりLP・防犯上の脆弱性を評価します。
評価対象は組織、教育、各種ルール(勤務・業務)、防犯表示物、防犯機器、警備、社外(自治体・業界団体)などです。
抑止は3要素の監視性、領域性、抵抗性を、検挙・捕捉は追跡性、実行性、円滑性を見ます。

・LP専門組織、専任者はほとんどない。
・万引犯対応ルールはあるが、教育・訓練をほぼしていないので現場理解度は総じて低い。中にはマニュアルと真逆のことを通達や会議で指示しているが、マニュアルを改訂していない場合もある。ルールを整理し、見直し、通知、教育、場合によっては訓練につなげていく。
・防犯表示物の貼付基準がない、または店任せ。よって貼付状態がバラバラである。

7. ダメな取り組み事例(費用対効果の検証)

ロス分析をきっちりと実施しないで、さまざまな取り組みを同時に実施。これでは何で効果があったのか効果検証ができません。
LP取り組みは費用対効果の検証がポイントの一つです。

いかがでしたでしょうか。

次回も引き続き事例を紹介します。