代表取締役社長 齋藤 昭生
市場環境に変化はありましたか?
行動制限は緩和されましたが、インフレ進行に伴い事業環境は厳しいものとなりました。
2020年春に政府が緊急事態宣言を発出して以降、数度にわたり緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の公示が行われましたが、2023年3月期第2四半期連結累計期間(以下、当中間期)におきましては、ワクチン接種の進展に伴う行動制限の緩和が行われ、わが国経済は段階的な経済活動の再開を経て回復の途上にあります。
一方で、昨年中旬からの原油価格・エネルギー価格の上昇に端を発した米国のインフレは、その後、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けたエネルギー価格のさらなる上昇や、中国のゼロコロナ政策に伴うサプライチェーンの混乱によりさらに加速し、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は今年に入り、9月までに政策金利であるFFレートを5回引き上げました。
米国では40年ぶりとも言われる物価上昇率を記録しましたが、程度の差こそあれ、モノ及び労働単価などモノ以外のインフレの状況は世界で起きており、わが国においても、急激な物価上昇が消費者の生活防衛意識を高め、低価格志向がさらに顕著となるなど、当社グループの主要顧客であります流通小売業を取り巻く環境は非常に厳しい状況が続いています。
このような市場環境の変化に伴い、当社グループは、2022年9月30日に、2023年3月期(通期)、及び当中間期の業績予想を期初に発表した金額から下方修正いたしました。そして、当中間期の経営成績は売上高以下、各利益項目ともに下方修正した業績予想は上回ったものの、前年同四半期比(以下、前中間期比)では減収・減益となりました。
第2四半期までの経営成績についてお聞かせください。
修正した業績予想は上回る着地でしたが、期初予想を下回りました。
当社グループ全体の当中間期の経営成績は、売上高が前中間期比3.2%減収の12,281百万円となり、営業利益が同32.6%の減益の1,227百万円、経常利益が同30.9%減益の1,297百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同29.1%減益の819百万円となりました。修正後の業績予想との対比では、売上高が81百万円、営業利益が77百万円、経常利益が97百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が89百万円、それぞれ上回りましたが、期初予想に対しては全てのセグメントにおいて売上高、各利益項目ともに下回りました。
それぞれのセグメントの状況についてお話しください。
厳しい環境の中、それぞれ明るい材料も見え始めています。
当中間期の連結売上高に占めるセグメント調整後売上高の比率が61.2%と最も大きい「国内棚卸サービス」は、新規案件の獲得や実施店舗数の増加などの売上高増加要因はありましたが、一部顧客における棚卸回数の減少や内製化の動きに加えて、在庫数量が減少したことを主な要因として、前中間期比5.0%の減収となりました。また、利益につきましては、この売上高の減少と従業員の待遇改善などにより、営業利益ベースのセグメント利益は前中間期比25.5%の減益となりました。
続いてセグメント調整後売上高が全体の31.0%を占める「リテイルサポートサービス」は、前年度上期は「商品補充サービス」や「店舗改装サービス」が顧客の内製化の影響により売上高が低下しましたが、当中間期は主要顧客からの受注店舗数の増加もあり、需要は回復基調にあります。しかし、コロナ禍で自治体より受注していた飲食店営業状況確認調査業務が終了したことが利益面に大きく影響し、売上高は前中間期比1.8%の減収にとどまったものの、セグメント利益は前中間期比43.7%の大きな減益となりました。
最後にセグメント調整後売上高が全体の7.8%である「海外棚卸サービス」の状況ですが、東アジア地域においては、中国のゼロコロナ政策により上海・北京・広州では事業活動の縮小を余儀なくされましたが、既存顧客の受注店舗数は増加しました。一方、アセアン地域では行動制限の緩和により既存顧客からの受注が回復したこともあり、セグメント全体としては前中間期比7.1%の増収となりましたが、この売上高の増加には円安という為替要因が大きく影響しております。また、セグメントとしての損失は156百万円となり、前中間期のセグメント損失133百万円から赤字幅が若干拡大しています。
下期の取り組みを教えてください。
中期成長戦略に沿った取り組みを確実に進捗させます。
現在、当社グループはチェーンストア産業を変革する新たな価値を創造するために、「棚卸会社からリテイルサービス会社への事業転換」「グループの柱となる新たな事業の創出」「展開地域をアジアから世界へ拡大」という中期の成長戦略を掲げておりますが、今年度下期は特に回復する需要を見越して、売上獲得と受注体制の強化に注力してまいります。
具体的には、外国人観光客の入国制限の緩和によりインバウンド需要の回復が見込まれ、「国内棚卸サービス」において顧客の店舗在庫数量が増加することによる売上の増加や、「リテイルサポートサービス」における「商品補充サービス」の拡大を想定しており、外国人留学生の入国制限の緩和も、当社グループの採用環境の好転に寄与すると考えています。
また、当社グループの顧客資産は国内外合わせて2,500社以上ありますが、提供しているサービスの全てをご理解いただいているとは考えておりません。そのため、セグメントを横断して顧客の窓口を一本化し、当社グループのフルサービスを紹介するとともに、メーカーやベンダーへの営業を強化します。海外においても、これまでの日系企業を中心としたアプローチを内資主要企業に拡大し、WEBマーケティングの強化によるサービスの周知も併せて行います。
そして、グループの柱となる新たな事業の創出への取り組みですが、社内から広く新規事業・新規サービスに関する提案を受けつけ、取締役や社外取締役を中心としたメンバーによって当該事業・サービスの将来性などを議論する新規事業検討会を経て、サービス化に向けた活動を開始しており、既に賞味期限チェックサービス、災害備蓄品管理サービス、3DVR撮影代行サービス、ゴンドラ診断サービスの4つのサービスで売上が計上されています。
最後に、事業展開地域をアジアから世界へと拡大させる取り組みですが、2020年に米国カリフォルニア州に開設したオフィスが、この11月に当社グループの100%子会社として事業を開始することが決定しました。当社の主力事業である棚卸サービスは、もともと米国で生まれ、それを当社創業者が日本に紹介したものです。米国の流通業界の最新事情、また最新のテクノロジーの研究・調査を今まで以上に行うとともに、実際に営業を開始することは、今後の当社グループの新たな事業の柱となるサービスの発掘・発見に結びつくものと確信しております。
株主の皆様におかれましては、これまでのご支援に深く感謝の意を申し上げるとともに、現在の当社グループがさらに高く飛躍するためのこれらの取り組みをご理解いただき、これまでと変わらぬご支援、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。