前年度下期から続く受注拡大に生産性向上が加わり、業績予想の上方修正を発表しました。

代表取締役社長 福田 久也

事業環境と中間期の経営成績について教えてください。

中間期として6期ぶりの増収・増益を果たしました。

2025年3月期中間連結会計期間(以下、当中間期)におけるわが国経済は、雇用や所得環境に一定の改善が見られたことや、インバウンド需要の増加などを背景に、緩やかな景気回復の動きを見せましたが、一方で物価高や自然災害の発生による消費マインドの停滞、円安に伴う資源および原材料価格の高騰に加え、世界的な地政学リスクの緊張状態が続き、依然として先行きは不透明な状況です。
また、当社グループの主要顧客である流通小売業界におきましても緩やかな景気回復に伴い一定の収益の押し上げ効果は見られたものの、業種・業態を超えた価格競争の激化、人件費や光熱費、物流費などの店舗運営コストの増加、個人消費における慎重な姿勢の継続により、業界を取り巻く環境は引き続き厳しさを増しています。
このような状況のもと、当社グループ全体の中間期の経営成績は、昨年10月に完全子会社化した株式会社mitorizの業績が反映されたこともあり、売上高は前中間期比23.0%の増収である16,011百万円となり、2期連続で前中間期を上回るとともに、中間期における過去最高を記録しました。また、営業利益は同44.6%増益の1,292百万円、経常利益は同43.1%増益の1,353百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同21.9%増益の771百万円となりました。全ての利益が前中間期を上回るのは4期ぶりのことであり、売上高も含めた増収・増益は6期ぶりのこととなります。

それぞれのセグメントの状況についてお話しください。

新たな3つのセグメント全てで、前中間期比増収・増益となりました。

今年度より創業50周年である2028年度に向けた新たな中期経営計画『vision50』を推進するにあたり、既存事業を機能別に整理し、経営資源を集中することによって成長スピードを高めることなどを目的として、これまでのセグメントを、小売業に対し多様なサービスやソリューションを提供する「リテイルサポート事業」、メーカーに対しマーケティングソリューションを提供する「マーケティング事業」、海外における「国際事業」という新たなセグメントに再区分しました。
このうち、国内棚卸サービス、店舗における補充・改装サービスを行う「リテイルサポート事業」は、中間期の連結売上高に占める比率が約75%を占めていますが、国内棚卸サービスにおいて、在庫数量、料率、受注店舗数がそれぞれ増加し、補充・改装サービスにおいても商品補充サービス受注数が増加したことから、前中間期比5.3%の増収(セグメント売上高:11,994百万円)となりました。
利益面でも国内棚卸サービスにおける新棚卸機器の導入効果やスケジュールの平準化が奏功し、また、前年度までサービス品質のさらなる向上のために行っていた人員の補充が経験者の増加につながったことから生産性が向上し、営業利益は前中間期比36.6%の大幅な増益(セグメント利益:1,252百万円)となりました。
また、昨年10月にグループインした株式会社mitorizの大手メーカーを中心としたフィールドマーケティング事業も好調に推移し、増収基調が継続しています。同社の業績が寄与する形で「マーケティング事業」の売上高は、前中間期比671.8%の増収(セグメント売上高:2,558百万円)となり、同社株式ののれん償却費を含んだセグメント営業利益も27百万円を確保しました。
さらに、海外連結子会社の実地棚卸サービス事業を中心とした「国際事業」は、進出している国・地域の経済活動が正常化したことや、既存顧客からの受注店舗数が増加したこと、新規顧客の獲得に成功したことから、東アジア、アセアン、米国の各地域の売上高は前中間期比で増加し、セグメント売上高は前中間期比12.7%増収の1,458百万円となりましたが、これには為替の影響による増収分の115百万円が含まれています。利益面においても、前中間期は13百万円の営業赤字でしたが、前年に設立したシンガポールの連結子会社の赤字はあったものの、セグメント全体では8百万円のセグメント営業利益を計上しています。
なお、中期経営計画『vision50』では5年間を収益力の向上と成長軌道への回復を目指す期間と位置づけ、成長の好循環を実現するための投資を積極的に行っていくこととしていますが、収益の柱である「リテイルサポート事業」の業績回復が見られたことは明るい材料と言えます。

中期経営計画『vision50』の進捗をお聞かせください。

新規事業の調査を進めるとともに、まずは人財への投資を行っています。

棚卸の“一本足打法”から脱却し、2029年3月期に目標としている連結売上高500億円の構成比において、「リテイルサポート事業」が50%、「マーケティング事業」と「国際事業」に「新たな事業(NEXT事業開発)」を加えた事業群が50%を占めるためには、新規事業で100億円の売上高を創出することが大きな鍵となります。既存事業の“深化”とともに、将来の主力事業の創出に向けた新規事業の“進化”の取り組みとして、マーケティング事業における新たなソリューションの提供に向けた調査・開発、国際事業におけるEU、カナダ、豪州などへの進出も視野に入れた調査などを行っていますが、ここにおける成長投資については、決してM&Aやアライアンスなどを排除することなく、進めていく所存です。
また、「成長に向けた投資の5年間」でまず着手していることは、人財への投資です。会社が掲げている理念、方向性の共有のためにタウンホールミーティングを実施し、またイノベーティブな環境の醸成に向けた取り組みも進めていますが、特に部門横断的に活躍できるプロフェッショナル人財、世界で活躍できるグローバル人財、そして将来の経営を担うことができる経営人財の育成に向けた取り組みをさらに強化し、会社の成長に向けた「強い意志と強い組織の形成」に努めてまいります。
創業50周年である2028年度をマイルストーンとして、100年企業を目指し、持続的な成長を確かなものとするための現在の当社の取り組みについて、株主の皆様のご理解と、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。