持続的な成長を目指したさらなる成長投資に向けて、今期はリテイルサポート事業の基盤強化に努めます

代表取締役社長 福田 久也

当期の事業環境と経営成績についてご説明ください。

売上高は2期連続で過去最高を記録し、各利益項目も増益を果たしました。

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日、以下「当期」)の事業環境は、雇用や所得環境の改善を受けて、景気は緩やかな改善基調を辿ったものの、世界における紛争等の地政学リスクの継続や物価の上昇、また、米国の政権交代に伴う通商政策変更への不安感から、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
当社グループの主要顧客である流通小売業界におきましても、所得環境の改善や商品単価の上昇、インバウンド需要の回復といった収益の押し上げ効果が見られたものの、業種・業態の垣根を越えた競争がさらに激しさを増すなか、人件費の上昇やエネルギー価格の高止まりなど、店舗運営を巡るコスト上昇圧力は強い状態が続いています。また、個人消費も、生活必需品等の物価上昇に伴う消費者の節約志向の高まりから、2024年の総世帯の実質消費支出が前年比マイナス1.6%と2年連続で減少するなど、業界を取り巻く環境は引き続き厳しさを増しています。
このような状況のもと、当期の業績につきましては、売上高が2期連続の増収(前期比+13.2%)の33,960百万円となり、前期に続いて過去最高を記録しました。また、利益項目につきましても、営業利益が3,032百万円(同+20.2%)、経常利益が3,134百万円(同+19.6%)と、それぞれ4期ぶりの増益を果たし、親会社株主に帰属する当期純利益も2期連続の増益となる2,104百万円(同+10.2%)となりました。
当期につきましては、受注拡大ならびに生産性の向上などもあり、売上高、各利益項目ともに通期業績予想の上方修正値に対して、着地の金額は売上高が2.9%、営業利益が8.3%、経常利益が9.2%、親会社株主に帰属する当期純利益が3.4%とそれぞれ上方修正値を上回るものとなっています。
なお、当期の年間配当金につきましては、期初より1株当たり85.00円を年間の予想配当金としてまいりましたが、予想より10.00円増額した95.00円と2期連続の増配を予定しています。また、これによる配当性向は38.1%となっています。

各セグメントの状況についてお話しください。

新たなセグメント全てで増収・増益を果たしました。

まず、従来の「国内棚卸サービス」「リテイルサポートサービス」「海外棚卸サービス」というセグメント区分を、当期より、小売業に多様なサービスやソリューションを提供する「リテイルサポート事業」、メーカーに対してマーケティングソリューションを提供する「マーケティング事業」、進出地域および顧客固有のニーズを満たすソリューションサービスを開発し拡販、そしてアジアから世界へと展開地域の拡大を目指した「国際事業」に再編しています。
当期のポイントとしては、収益の柱である「リテイルサポート事業」が前期の減益から回復したこと、新たに設定した3セグメント全てにおいて増収・増益を達成したこと、成長事業の売上高が二桁の伸長となったことの3点が挙げられます。
セグメント別の状況は、「リテイルサポート事業」において、国内棚卸サービスが売上高の重要指標である在庫数量、料率、実施店舗数のいずれもが上昇し、また、補充サービスの受注数も増加したことから、セグメント売上高は25,267百万円と前期比5.6%の増収となりました。またセグメント営業利益も、生産性改善の取組みが奏功したこと、加えてサービス料金の改定などもあり2,765百万円と前期比17.5%の大きな増益に転じました。
「マーケティング事業」は、前期の10月にグループインした株式会社mitorizの業績が通年で寄与したこともあり、売上高は5,368百万円(前期比+75.2%)と大きな増収となりましたが、下期だけの比較においても同社の売上高は10%を超える増収となっており、堅調に業績が推移していることがご理解いただけると思います。また、利益面では調査サービスの伸長が寄与したことも加え、のれん償却費を含んだセグメント営業利益は104百万円と前期比14.3%の増益となっています。
最後に「国際事業」ですが、東アジア・アセアン・米国の3地域全てにおいて増収となりましたが、特に構成比の高い東アジアで12.0%の増収となったことが牽引し、売上高は前期比10.8%の増収である3,323百万円となり、利益面では、韓国・タイが5期ぶりに黒字化したこともあり、2期連続で黒字(セグメント営業利益152百万円、前期比42.3%の増益)を確保しました。なお、この金額には、為替による影響(+23百万円)を含んでいます。

中期経営計画『vision50』の進捗と今期の取組みについて教えてください。

リテイルサポート事業の基盤強化、デジタル投資と人材の育成に努めます。

『vision50』において、サービスプロバイダーからソリューションプロバイダーへと進化を遂げ、単発のサービスの提供にとどまらず、多面的にワンストップでさまざまなサービスを提供することで、顧客の経営課題を解決する存在、メーカーと小売業と消費者をつなぐ唯一無二の存在となることを目指し、企業価値の向上と成長の好循環の実現に向けた取組みを進めるとともに、達成すべき経営指標(売上高:500億円、ROE・ROIC:10%)を明確に定めました。
その初年度である当期ですが、成長の好循環を実現するための取組みについては、全てのセグメントの業績が伸長しキャッシュフローを創出したことに加え、人的資本経営に基づいた人的投資や基幹システムの刷新、DX推進に向けたデジタル投資を行ったことにより、その実現に向けた歩みを確実に進めました。また、企業価値の向上に向けた取組みについては、NEXT事業開発に向けてオープンイノベーションによる新規事業の取組みを開始したほか、社内イベントとしてビジネスピッチコンテストの開催や、株式会社soucoとの倉庫シェアリングも今後の事業化に向けてのサービス展開を開始する計画となっています。
また2025年3月31日に公表したプレスリリースのとおり、国内棚卸サービス市場において最大のシェアを有する当社が、同市場において第2位のシェアを占めるパーソルマーケティング株式会社より棚卸事業、リテール事業等の事業譲受を9月1日に実行する予定です。これにより、当社グループの国内棚卸サービス市場におけるシェアは約75%程度に拡大し、より盤石になることになりますが、今期については、この国内棚卸サービスを含むリテイルサポート事業の基盤強化と人材・技術の優位性による収益力の向上に向けての取組みを大きなポイントとして掲げ、同じくDX・AIの活用による生産性の向上や販管部門の業務改革実施といったデジタル投資効果の最大化、そしてグループの成長を目的としたプロフェッショナル人材やグループ内での人材流動化に向けた人材育成に注力していきます。
なお、今期につきましては、期初の業績予想として売上高は前期比8.9%増収の37,000百万円を見込んでいるものの、営業利益については22.5%減益の2,350百万円、経常利益は19.9%減益の2,512百万円、親会株主に帰属する当期純利益は1.6%減益の2,070百万円と、減益見込みとなっています。
『vision50』においては、収益力の向上と成長軌道への回復を目指す5年間とし、その実現のためのデジタル投資とM&A等を含む事業投資を総額100億円規模で行うことを謳っていますが、今期はその一環として、デジタル投資の実行に伴う経費計上を主とした販管費の増加、そして物価高騰・賃金上昇による影響を見込んだ結果、減益予想となっています。
デジタル投資(IT戦略)の今後につきましては、DXビジョンである「デジタル技術を活用し、チェーンストアの課題解決に貢献し続ける」を実現するため、ITインフラの強化、そして3つのセグメントのデータの連携を行うことで、データドリブンな営業活動や顧客提案といった新しい付加価値を生み出す取組みを行い、売上拡大につなげていきます。また人的資本経営を踏まえ、グループ全体での人材の柔軟な配置・活用を推進することで、グループとしての経営基盤の強靭化、ひいては『vision50』の経営指標達成につながるものと確信しています。『vision50』の5年間は、当社グループの持続的な成長のため、新たな価値創造に向けた成長投資(人的投資+デジタル投資+事業投資)期間であるということをご理解頂き、株主の皆様には変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。