強固な財務体質を活かし、今後、持続的な成長を遂げるための投資を果断に行っています。

代表取締役社長 福田 久也

事業環境と中間期の経営成績について教えてください。

売上高は期初予想を達成しましたが、前中間期比で増収・減益となりました。

新型コロナウイルス感染症が5類へ移行したことにより、各種行動制限が緩和され、社会経済活動の正常化は進みましたが、ウクライナ情勢の長期化という地政学リスクは依然として存在し、資源価格やエネルギー価格、原材料費の高騰も続きました。また、円安の進行を主因として物価の上昇が継続したことから、消費者は生活防衛意識を一層高め、低価格志向が顕著となり、当社グループの主要顧客である流通小売業を取り巻く環境は非常に厳しい状況が続いています。
このような状況のもと、当社グループ全体の2024年3月期第2四半期(以下、当中間期)の経営成績は、売上高が前中間期比6.0%の増収である13,014百万円となり、期初予想を上回ったものの、営業利益は前中間期比27.2%減益の894百万円、経常利益は同27.1%減益の945百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同22.7%減益の632百万円と、利益面は減益となりました。

それぞれのセグメントの状況についてお話しください。

国内事業はコスト要因が利益を押し下げましたが、海外事業は通期の黒字化が見通せる段階です。

当中間期の連結売上高において56.9%を占める「国内棚卸サービス」は、これまでの売上減少要因であった棚卸回数の減少及び商品在庫数量の減少傾向に鈍化が見られ、棚卸実施店舗数はコロナ前の水準に回復しました。しかし、海外からの渡航者の増加によりインバウンド需要は拡大傾向にあるものの、実際の店舗における平均商品在庫数量は減少傾向が続いていることに加え、一部の顧客における棚卸回数の減少や事業再編によって一部の事業を「リテイルサポートサービス」に移管したことにより、セグメントとしては前中間期比1.5%の減収となりました。また、利益につきましては、社員給与のベースアップや嘱託社員の賃上げ実施、事業活動の正常化に伴う各種費用の増加や新規顧客層の開拓を目的としたマーケティング費用の増加もあり、営業利益ベースのセグメント利益は前中間期比23.9%の減益となりました。
続いて、セグメント調整後売上高が全体の33.2%を占める「リテイルサポートサービス」ですが、「商品補充サービス」において主要顧客からの受注店舗数が増加するなど、コロナ禍の影響で減少した受注が回復傾向で推移し、「店舗改装サービス」においても主要企業からの受注店舗数が増加するなど、明るい材料がありました。その結果、セグメントの売上高は前中間期比13.5%の増収となりましたが、従業員の賃上げに加え、受注店舗数の増加に対応するオペレーション体制の構築費用が増加したことや実施条件の変更といった粗利益率の低下要因により、営業利益ベースのセグメント利益は前中間期比78.4%の大きな減益となりました。
最後にセグメント調整後売上高が全体の9.9%である「海外棚卸サービス」は、コロナ禍での行動制限が各国で緩和され、経済活動が正常化したことに伴い、受注状況が増加傾向で推移しました。それに加え、料率の引き上げも実施したことから、セグメントとしては前中間期比34.6%の増収となりました。この売上高の増加に伴い、セグメントとしての損失は前中間期の156百万円から13百万円へと大きく改善し、棚卸事業を行う海外子会社9社のうち、5社が黒字化しました。このことからも、同セグメントの今年度通期での黒字化の見通しが立ったと考えています。
また、中間期の経営成績や(株)mitorizを子会社化したことによる影響を加味し、通期(2024年3月期)の業績予想を、期初予想から修正し、発表しています。
各経営指標の修正通期予想は、売上高が29,000百万円と、期初予想の26,400百万円から増額修正した一方、利益面は、営業利益が2,850百万円から2,450百万円、経常利益が2,931百万円から2,531百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が1,963百万円から1,686百万円へと減額修正しております。なお、株主の皆様への還元であります配当金につきましては、期初予想としてお示しした、期末の1株当たり80円の普通配当の実施予定を変更していません。

今年度掲げられていた重点施策の進捗について教えてください。

クロスセル営業の展開、(株)mitorizの子会社化、シンガポールへの進出準備などを進めました。

現在、当社グループは、「棚卸会社からリテイルサービス会社へ事業転換する」「グループの柱となる新たな事業を創出する」「展開地域をアジアから世界へ拡大する」の3つの中長期方針を定め、事業を推進しています。
今年度、「リテイルサービス会社への事業転換」については、前年度より推進しております棚卸サービスを提供している主要なお客様に対して、複数のサービスを導入していただくことを目的としたクロスセル営業に取り組んでいます。前年度は上位50社に対してこのクロスセル営業を行い、棚卸サービス以外に約2億円の売上を計上しました。今年度は対象企業を87社に拡大し、より多くのお客様に対して当社の幅広いサービスの理解を深められるよう、クロスセル営業の強化に努めます。
また、「新たな事業の創出」については、(株)mitorizを子会社化しました。同社はこれまで大手メーカーを中心に、350社を超える企業から店頭活動を中心に業務を受託してきたフィールドマーケティングの会社であり、全国10万人のキャストネットワークを活かしたリアルマーケティング事業に加え、人材派遣などのHR事業やデジタルマーケティング事業も行っています。同社がグループインしたことにより、今後、大手メーカーから流通小売業までの顧客資産の共有により販売チャネルの強化を図り、メーカーと流通小売業をつなぐ唯一無二の存在となることを目指します。また、スタッフの共有による動員力の強化、両顧客資産のニーズを満たす新たなサービスやソリューションの創出というシナジー効果にも期待していますが、個人的には両社の保有する棚卸データ・売上データなどの多様なデータの分析・解析から、可視化できるデータ・ソリューションの提供可能なコンサルティング型マーケティングサービスの道を切り拓きたいと考えています。
最後の「海外事業展開」については、今年2023年11月20日にシンガポールに新会社AJIS RETAIL SOLUTIONS SINGAPORE PTE.LTD.を設立する運びとなりました。1980年代後半から急激な経済成長を遂げ、世界的な金融センターとして成長した同国は、1人当たりのGDPが世界第6位(2022年)の豊かな先進国であり、一大商業地域でもあります。同国に新会社を設立した目的は、社名が示すとおり、高付加価値なラウンド型サービスによるリテイルソリューションの提供など、これまでとは異なるビジネスモデルの実証実験を行うことで、当社グループのグローバルなビジネス展開をさらに加速させるためです。将来にわたって大きな成長が見込まれるアジアにおいて、当社グループは現在8子会社で棚卸サービスを行っていますが、シンガポールにおける事業ノウハウの蓄積、そして横展開が、アジアにおけるグローバルビジネスの事業基盤をより強固なものとすると考えています。
当社グループは、今後、持続的な成長軌道を辿り、企業価値を高めるために、中長期方針に沿った投資、また、テクノロジーの研究開発やシステムへの投資、人的資本への投資などを果断に行っています。また、来年度(2024年度)には、現在当社グループが目指している事業方向性を明確に示した新しい中期経営計画を発表すべく準備を進めています。
株主の皆様におかれましては、これまでのご支援に深く感謝の意を申し上げるとともに、現在の当社グループの取り組みをご理解いただき、これまでと変わらぬご支援、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。