「人的資本の最大化」に向けた取り組みをさらに強化します

代表取締役社長 齋藤 昭生

コロナ禍2年目となった当期の事業環境と経営成績についてご説明ください。

顧客にサービス内製化の動きがあり、減収・減益決算となりました。

2020年4月に政府により緊急事態宣言が発出されて以降、数度にわたる新型コロナウイルス感染症の再拡大によって、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の発出が行われ、2021年度におきましても社会経済活動は大きな制限を受けました。そのほかにも、2021年夏頃より始まったエネルギー価格、資源価格の上昇は、2022年初頭よりさらにその勢いを強め、米国において物価指数が40年ぶりの高インフレを示したことを受けて、3月には米国連邦公開市場委員会(FOMC)において2018年12月以来の政策金利(FFレート)の引き上げが行われるなど、ウクライナ情勢などの地政学リスクと相まって、景気の先行きに対する不透明感が広がっております。また、当社グループの主要顧客である流通小売業界におきましても、消費者の生活防衛意識の高まりによる節約志向は上昇しており、依然として厳しい経営環境が続いております。
このような環境のもと、当連結会計年度の業績につきましては、期初の業績予想において、前期比で売上高が2.4%減収の27,300百万円、営業利益が15.3%減益の4,000百万円、経常利益が16.5%減益の4,060百万円、最終利益である親会社株主に帰属する当期純利益が14.0%減益の2,740百万円と、減収・減益の業績予想を立てておりましたが、2022年3月17日に業績予想の修正を行い、売上高予想を期初予想比1,150百万円、営業利益を80百万円、経常利益を40百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を500百万円、それぞれ減額いたしました。最終利益の減額幅が他の利益項目よりも大きかったのは、次世代棚卸業務システムの開発中止に伴うソフトウェアの仮勘定の除却損等(約463百万円)が発生したためです。
そして、当期の経営成績は、売上高26,177百万円(前期比6.4%の減収)、営業利益が3,936百万円(同16.6%の減益)、経常利益が4,043百万円(同16.9%の減益)、親会社株主に帰属する当期純利益が2,250百万円(同29.4%の減益)と、期中に修正した業績予想にほぼ沿ったものとなりました。これにより、前期まで8期連続で達成していた増益は途絶えたことになりますが、当期の業績につきましては、将来を見据えてサービス品質向上を目的とした人的投資の拡充を戦略的に行った結果であることをご理解いただきたく存じます。

主力セグメントである「国内棚卸サービス」の業績についてお話しください。

サービス品質向上に注力した結果、生産性は低下しました。

当期のセグメント売上高は、前期比2.3%の微減収となる16,317百万円でしたが、営業利益は前期比16.4%の減益である3,107百万円となりました。
売上高の増収要因としては、新規案件の獲得に成功したことや前期に緊急事態宣言発出に伴い中止となった棚卸サービスの受注が回復したことが挙げられますが、一方で減収要因としては一部顧客において棚卸発注店舗数が減少したことや、既存顧客の店舗によっては在庫量が減少し、売上が減少したことなどが挙げられます。また、セグメントの営業利益が減少したことに、販売管理費の増加がありますが、これはシステム開発経費に加えて、当期最も注力したサービス品質向上施策の一環として人的投資を行い、採用コストが増加したことが要因です。
サービス品質の向上のためには、何よりも正確性を担保すること、そして顧客と取り決めた時間内で作業を完了することが重要であり、当期については想定以上の人員不足が発生したこともあって、これを補う雇用を行いました。この結果、2018年3月期を100とすると、2021年3月期に142にまで上昇していた生産性が、当期は134に低下しましたが、これは当期、重点施策として「サービス品質の向上」を推進した結果であります。

着実に「第2の事業柱」として成長してきた「リテイルサポートサービス」の状況はどうでしょうか?

減収・減益となりましたが、営業利益率は上昇しました。

「リテイルサポートサービス」のセグメント売上高は、前期比18.0%の減収となる7,778百万円で、期初予想の8,000百万円に対して2.8%未達となりましたが、営業利益は984百万円と、前期比では9.6%の減益にとどまり、期初予想の600百万円を大きく上回る利益を確保することができました。これにより、セグメントの営業利益率は、前期の11.4%から12.6%へと上昇しました。
売上高が減少したのは、前期に「巣ごもり消費」の増加から大きな需要が発生した商品補充業務や、同じく前期に堅調であった店舗改装業務(マーチャンダイジングサービス)において、顧客の雇用環境の好転が内製化に結びついたことなどが要因です。一方、エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)が官公庁から前期より受注しているコロナ関連の飲食店調査がさらに伸びたことは増収要因となりました。また、セグメントの利益率が上昇した要因は、生産性向上に向けた取り組みやバックオフィス業務の効率化などが寄与したものです。

「海外棚卸サービス」についても申し上げますと、セグメントとしての売上高は当期2,082百万円と、前期の1,769百万円から17.7%の増収となりましたが、2015年度以降で初めてセグメントとして営業赤字となった前期(109百万円の営業赤字)に続き、当期も175百万円の営業赤字となりました。これは、東アジア地域では、ほぼ想定内で売上が推移し、特に中国では大口顧客からの受注が増加するなどの明るい材料があったものの、アセアン地域で都市封鎖や行動制限の措置がとられた影響を受けたものです。当社グループは、「2030年 世界に展開するリテイルサービス企業へ」という“目指す姿”を定め、その方針のひとつに「展開地域をアジアから世界へ拡大」と掲げました。アジアの未進出国・地域の市場調査、米国オフィスの活用などにより、その事業フィールドを世界へ広げる視座を高めてまいります。

なお、当期業績の最後に、株主様への還元である配当について申し上げますと、当期の1株当たり配当金は前期比4円の増配となる80円を予定し、2023年3月期につきましても、期初ではございますが同じく80円を予想しております。当社グループは、株主還元を最も重要な経営課題として認識していることを明確とするために、このたび、配当に関する方針に「配当性向30%を目標」と具体的な数値を掲げました。これからも企業価値の向上、安定的な配当の維持に努めてまいります。

今お話に出た「2030年に向けたグループの取り組み」について、進捗を教えてください。

人的資本の最大化に向けた取り組みなどが始まっています。

今お話しした2030年における目指す姿、そしてそのミッションともいえる「チェーンストア産業を変革する新たな価値を創造する」という目標に向かって、当期は特に、「顧客にとって価値の高いリテイルサポートサービスの確立」、「創造性と挑戦力を生み出す組織文化の醸成」、「成長事業の創出に向けた投資を積極的に実行する」という3点に力点を置いて取り組みましたが、これらは全て「人的資本の最大化」が成否の鍵を握っているといえます。
教育機会の充実、社員の成長という「個人力」と心理的安全性の高い職場環境がもたらす「組織力」のハイブリッドこそが新たな価値創造の源泉であり、社員が自由に意見を発信し、その能力・長所が発揮される職場環境を整備することによって、さらに専門性の高い組織を構築することが可能となります。
また、成長事業の創出に向け、自分のやりたいことを実現するための一歩を踏み出すという目的で設立した「First Penguins Club(ファースト ペンギン クラブ)」には、当初の想定を大きく上回る55名もの社員が参加しております。「群れで海辺に並び、初めに海に飛び込むペンギン」を意味するこのクラブが、今後どのような発想で、どのような提言を行うのか、私もワクワクしております。
8期連続の増益を記録した当社グループは、2021年度に続き、2022年度についても営業利益の減益予想を期初予想として立てておりますが、8期連続増益は、それまでの期間において必要な施策を講じ、果敢にそれを断行したことがもたらしたものです。2030年に向けて、これからさらに飛躍するために、人的資本経営を推進することが極めて重要であり、このことに迷いはありません。
株主の皆様から賜ったこれまでのご支援に深く感謝するとともに、現状の当社グループの取り組みをご理解いただき、変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。