World Robot Conference 2019(中国北京)レポート2回目(全2回)

 株式会社エイジス 営業推進室の菅沼です。
 さる8月24日、中国北京で開催されたワールド・ロボット・カンファレンス(WRC2019)に行ってまいりました。すでに今年で5回目、熱気あふれる大会の現地レポートの最終回をお届けします。

WRC2019レポート第2回目

☆「従来型倉庫や店舗で活用できるロボット」
 倉庫向けAGV(無人配送車)や協調型AMR(自律移動ロボット)については、目新しい革新的技術よりも、既存技術にブラッシュアップを施した展示が目立ちました。先行導入事例から得られた知見をフィードバックし、より洗練され、実用的な価格設定へと”プロダクト化”する傾向にあります。

 旧来の産業ロボットのような、軌道式レールを使ったロボットもありましたが、少数にとどまっておりトレンドからは外れた印象を受けました。
 人と離れてロボットだけの”隔離エリア”を整えられる製造工場と違い、既存の物流現場は”人との協働”が大前提です。今までは”人とロボットの衝突事故”を防ぐ技術が無く、流通業は長らくロボット化による生産性向上の恩恵を受けられず結果、労働生産性を上げることができませんでした。
 事故を起こさない工夫を持つAMRによって、流通業にも革新的な生産性向上がもたらされるという期待が集まっています。 日本でも某巨大ECサイトなどで取り入れられている「ゴンドラ棚を動かす」リフトアップ型AGVと、従来倉庫や店舗での活躍を想定した「無人で棚間を自走する」カート型AMRの二つのAMRに大別されていました。

geek+社 P800 棚をリフトアップして運ぶAGV

 Geek+社は、リフトアップ型AGVであるEVEシリーズを展示していました。最大積載加重は約1000キロ、ミリ単位でのビジュアルナビゲーション方式と、AIによるセルフ給電で24時間稼動が可能、ピッキング、ムービング、ソーティングの各システムで、倉庫のオペレーション効率を上げる提案をしていました。

<BeeRobot>実演展示 棚は可動式、先頭にタブレット装着など、カスタマイズ可能と思われる。

 カート型AMRでは”BeeRobot”が話題でした。HRGの一員であるYiwu Laisi Technology Co.Ltd.が開発した協調型AMRであり、自己位置推定と環境地図作製を同時に行うSLAMを搭載しています。ウェアハウス管理システムと連動し、最も効率的なルートを選択して自律移動、障害物を避けて目的の棚に到着します。自動給電機能もあり複数台運用で24時間稼動を実現しています。

FORWARDX ROBOTICS  自動で動いて止まる台車

 FORWARDX ROBOTICS社の”AMR Xシリーズ”も注目が集まっていました。サイズ的には”台車”などのマテハン機器に近いイメージです。なんとなくこちらのほうが、倉庫での運用イメージが沸き易い形をしています。

 この企業のイチオシは、「人に自動追随するスーツケース」”OVIX”でした。驚くべきはその価格です。3999元(約64,000円)のキャンペーン価格で提供しています。歩いたら勝手について来てくれるスーツケースが6万円台で手に入るならば、一般消費者でも購入を考える価格設定です。

人の後をついてくるスーツケース”OVIS” 目が届く側面に随伴するのが特徴(FORWARDX ROBOTICS メルマガより)

 オフィスへのデリバリーなど、短距離配送に着眼し、差別化を図っていたのが、SEGWAY ROBOTICSの“langRB”シリーズでした。商品が格納できるキャビネットケースが、そのまま自走するイメージです。
 SEGWAYの走行モジュールなど、既存技術の応用と独自の自走技術を組み合わせて作り上げることで、従来AMRに比べ、比較的安価にリリースできるのではないかと、期待が持てる展示でした。

SEGWAY ROBOTICS “langRB”シリーズ  自走で動くキャビネットのイメージ 観音開きタイプもあり

☆まとめ
 一般公開日に参加したせいか、参加者のほとんどが「家族連れ」で、あらゆる意味で熱気あふれる大会でした。(GW期間中のT○L並に混雑していました。。。)

 日本の展示会のように、スタッフが笑顔で呼びかけ、お客様と名刺交換して、ではブースで少し商談を・・・などという空気は皆無で、受付カウンターの前に名刺入れがあり、興味ある人は名刺入れてください、資料がほしい人はQRコードがありますので、勝手にダウンロードどうぞ。といった大陸的な合理主義に、軽いカルチャーショックを受けました。でもこれはこれで面倒が無くて「アリ」だなと感じました。

上海大学も QRコードでダウンロード請求、ペーパレス浸透

 大学開発の義足義手などの医療ロボット展示や、少年少女が参加する玩具ロボットの大会なども併設して行われており、”机器人(ロボット)”と名が付けば、何でも大歓迎な、良い意味で”ごった煮”感のある展示会でした。

 このように、青少年が積極的に企業向けブースでロボットに触れたり、玩具ロボット大会といった遊びから、将来の製造や開発に興味を持たせる機会づくりに、官民分け隔て無く取り組む姿は、日本では見られない自由度を感じる展示会でした。

SIASUN ”TCR”テーブルトップ協調ロボットに興味津々な少年たち

 政府も企業も一般国民も、ロボットに寄せる大きな興味と期待が見て取れました。“合理的”に「良いと思えばすぐに取り入れ、ダメと思えばすぐに離れる」日本には無い”思い切り”の良さが、中国市場の魅力だと思います。

 中国ロボット市場は、他国以上の熱意とパワーで瞬く間に進捗し、世界TOPに向けて官民一致で全力疾走しています。
 日本でもようやく流通業やサービス業で、「人出不足」対策としてロボット導入が囁かれていますが、先行投資コストがネックとなり、導入に二の足を踏んでいる企業の話をよくお聞きします。
 ロボットを積極導入した企業への支援策を日本政府が行うことを考えないと、中国の成長スピードには追いつけないのではないかと考えさせられました。(労働者の「賃金上昇」については、企業努力に任せっきりなのですから、それぐらいは支援してほしいですよね。)

 ロボットへの熱気と、あふれんばかりの人ごみ、分け隔てないフレンドリーさ(ヒトとの”距離間”が日本人より近く”圧”がすごい)に圧倒された北京での1日でした。