











Newsletter from California, USA 「ウォルマートの取り組み」 前編
エイジス米国カリフォルニアオフィスのドーリングです。アメリカの最新情報とビジネス動向をお届けいたします。
米国はパンデミックからエンデミックへとシフトし、経済活動は力強く回復しています。
復活に伴う需要拡大や社会構造変化によるサプライチェーン問題、インフレーション、最前線の労働力不足という状況下で、リテーラーは変化に適応しながら事業の成長に励んでいます。
小売業の革新をテーマに躍進する巨大小売チェーン米ウォルマート(Walmart)の取り組みをご紹介いたします。
ストアデザインの追求
ウォルマートは、今年1月時点で全米に4,742店舗を展開する(Sam’s Club 600店舗除く)世界最大規模の小売チェーンです。
2月に発表された年間総売上高は5,728億ドル(約65兆円)で、2022年第4四半期の米国既存店売上高(ガソリンを除く)は5.6%増となり、30四半期連続で前年を上回っています。
特に食料品市場のシェア拡大に成功し、食品カテゴリーは20%近い成長率となりました。(Walmart Corporate参照)
今年に入ってウォルマートは、デジタル化による便利で迅速なショッピング体験を強化する一方で、買物客に店舗でゆっくりと充実した時間を過ごしてもらう新しいストアコンセプト 「タイム・ウェル・スペント(Time Well Spent)」 を発表しました。
「タイム・ウェル・スペント」 は、買物客がより長く滞在したくなる売場デザインを取り入れ、買物客とのインタラクティブなやり取りや店舗ならではの体験にフォーカスし、快適で長い滞在時間を創り出すことにより、平均購入額を高める戦略です。
同コンセプトを導入したシグネチャーモデルとなるアーカンソー州スプリングデールのテスト店舗は、リラックスしてショッピングを楽しめるよう売場と売場の間に十分なスペースを取り、理想のライフスタイルや様々な生活シーンをデザインした大型ディスプレイを設置しています。
店舗から新たなトレンドを発信する取り組みとして、アパレルブランド米ギャップ(Gap)と提携した 「ギャップ・ホーム(Gap Home)」 や 「クイアー・アイ(Queer Eye)」 などストア・イン・ストアのブランド展開を強化し、家具、生活用品、ビューティー、アパレル分野を中心に専門ビジュアルマーチャンダイザーによる魅力的な展示を推進しています。
店舗の労働力不足に対応する新しいカスタマーサービスアプローチとして、売場全体でモバイルアプリ統合を行い、QRコードスキャンによる商品情報やレコメンド商品の表示、デジタルクーポン配布、ウォルマート独自サービスの案内など便利な情報を提供し、アプリを通して購入する商品の宅配サービスを簡単に申し込むことが出来ます。
売場に設置された大型スマートスクリーンは様々な目的で使用され、例えば、買物客が売場の棚から商品を取り出すと、棚の上にあるスマートスクリーンが商品のレビューを自動的に表示します。
「インキュベート(育む)」 をキーワードにした新たなストアデザインは、年間約800から1,000店舗のペースで導入される予定です。
eコマースとメンバー特典の拡充
ウォルマートのウェブサイト(Walmart.com)とアプリによるeコマースプラットフォームは、低価格で良質な商品ラインナップ、使いやすいデザイン、注文内容や購入履歴の見やすさ、便利なピックアップや迅速な配送サービス、簡単な返品手続きなど、ユーザビリティーの高さで人気です。
優良なウェブサイトとアプリにより、eコマースを含むウォルマートの顧客数はパンデミック前と比べて6倍に増加し、米国でのeコマース売上はこの2年間で90%増となっています。(Walmart Corporate参照)
eコマースで今後さらに成長が見込まれるネットスーパー市場において、ウォルマートは米アマゾンや競合小売チェーンを抑えて35%のシェアを占めるナンバーワンであり、約3,200万人がサブスクリプション型メンバーシップ 「ウォルマート・プラス(Walmart+)」 に有料登録(年額98ドル、月額12.95ドル)しています。(Deutsche Bank参照)
「ウォルマート・プラス」 は、スーパーセンターにある食料品、日用品、家電製品などの無料当日宅配サービス、ガソリン割引、店内のスキャン&ゴー決済、処方薬の割引など数多くのメンバー特典があり、毎週更新されるメンバー限定のセールアイテムやオンラインショッピングイベントなど、メンバー向けサービスが充実しています。
競合のアマゾン・プライムは、有料メンバーシップの値上げ(年額119ドルから139ドル、月額12.99ドルから14.99ドル)を決定しましたが、ウォルマートはメンバー費は据え置きで特典サービスの拡充を図る計画で、アプリ開発やeコマース投資を強化する方針です。
新事業の強化
ウォルマートCEOのダグ・マクミロンは、2021年11月決算発表時に、 「ウォルマート・ゴーローカル」、「ウォルマート・コネクト」 、「ウォルマート・フルフィルメント・サービス」、「ウォルマート・ルミネート」 を筆頭とする新事業の強化に触れました。
「ウォルマート・ゴーローカル」 は、ウォルマートのラストマイル配送サービスを他社に提供するデリバリー・アズ・ア・サービス(DaaS)宅配事業で、昨年10月に大手ホームセンターチェーン米ホーム・デポ(The Home Depot)とクライアント契約を交わし話題となりました。この契約によりホーム・デポは、自社受注システムとウォルマートの配送システムを連携し、オンライン注文商品の当日または翌日配送を実現しました。
「ウォルマート・コネクト」 は、メディア事業 「ウォルマート・メディア・グループ」 を改名した広告メディア事業で、オンデマンド広告プラットフォーム米Trade Deskとの提携やデジタル広告自動化プラットフォーム米Thunder Industriesの買収を行い、広告事業売上高は1年間で136%増の急成長を遂げました。
今後、売上高を10倍以上に拡大して米国トップ10の広告プラットフォームになる目標を掲げています。
「ウォルマート・フルフィルメント・サービス」 は、マーケットプレイスに出品するベンダーに向けて、注文処理、カスタマーサービス、返品手続きなどの管理業務を代行し、ウォルマートのロジスティクス機能を利用した安価で迅速な出荷配送を可能にするサービスです。
「ウォルマート・ルミネート」 は、ウォルマートが持つ毎週約1億5千万人の顧客の購買データ解析テクノロジーを活用し、メーカーやサプライヤーに顧客インサイトや各販売チャネルのパフォーマンスデータ分析などを提供するサービスです。