チェーンストアのあるべき姿~リサーチ編~

 エイジスグループのシンクタンク・エイジスリテイルサポート研究所の三浦 美浩(みうら よしひろ)と申します。もともと私は「販売革新」「食品商業」などの月刊雑誌の編集長をしており、長年流通業の取材をさせていただいておりますが、そんな私は迎える2023年ほどチェーンストアにとって“難しい1年”はないだろうと感じています。

 円安などによる物価の上昇と高止まり、産業が動き出すことによる人手不足と人件費の高騰… 私たちを取り巻くコストの上昇要因は多々あります。増えない収入と家計の危機、3年間のコロナ禍によって新しく生まれた購買行動とお客さまの変化、外食の宅配やテイクアウトという新しい競合のマーケットでの伸長など競争環境の激変… 数え始めたらきりがないほどコロナ禍の3年間の変化は大きいのです。

コロナ禍によってお客様の購買行動や店舗販売戦略の変化など、小売業界全体に大きな影響を及ぼした。©iStock

 2019年段階の店のあり方、店づくりは完全にリセットされなくてはいけませんし、コロナ禍で特別な需要が発生した分野の売場、品揃えの見直しが必要な時期にきているのです。

 例えば、
・コロナ前に比べて2割近く家計消費の増えた冷凍食品は以前のままのスペースで良いのか?
・自宅での調理が増え、同時に外食の宅配も増加した現在、私たちのデリカの商品はこれで良いのか?
・まとめ買いニーズが定着した今、ドライ食品で箱売り需要にどう対応するのか?
・面分業が広がった調剤にはどう対応するのか?

 このように“新常態=ニューノーマル”への対応テーマはたくさんあります。私はこの際のキーワードを“アップデート=自社の最新の勝ちパターンへの転換”にあると考えています。新しいモデルを創造する“リモデル”と言っても良いかもしれません。

 本稿では2回にわたり、この重要性をチェーンストアの皆さんにお伝えし確認したいと考えます。このスタートにおいて、重要なのは“リサーチ=調査・分析”です。

激変する環境を勝ち抜くために、先ずは「リサーチ(調査・分析)」が最優先。©iStock

〈分析①-環境の分析〉
 第一に、自店の環境与件の変化を確認することです。皆さんもビジネスシーンで活用されているであろう、顧客、競合店、自社を分析するフレームワークである「3C分析」を実施します。さらに自社分析を深掘りして外部環境、内部環境と好条件、悪条件の4象限で分け、整理する「SWOT分析」にも取り組む必要があります。

 足元商圏の子育て世代は減っていた、増えていたとか、競合店はコロナ禍で生鮮酒売場を広げる改装をしていた。あるいは託児所が増えて働く女性がさらに増加していた、好調なドラッグストアがこの3年間で数多く出店していた、なんていう事実も確認できるでしょう。パンデミックで超多忙だった時期から若干でも脱した今こそ、こうした冷静な分析は重要です。

 つまり、”3C分析”で得た外部環境の結果を受けて、”SWOT分析”で自社の「強み」「弱み」からなる内部環境を踏まえた戦略を検討する”環境の分析”を行う必要があるのです。

“3C分析”で集めた情報を元に、”SWOT分析”で事実を客観的に整理し、自社がとるべき「戦略目標」を立てる

〈分析②-数値の分析
 第二に、さらに詳細に自店の実態を数値で把握することも必要です。値上げが続いているのですから売上高だけでなく粗利益の確認も必須ですし、好調を維持している店と、そうでない店の複数店の比較も重要です。

 エイジスグループでは現在、チェーンストアの皆さまに「PAS」というサービスを提供しています。PASとは「Planogram Assessment System」という“ゴンドラ診断システム”で、簡単に言えば店内全ての商品を対象に、“いつ、どこの店舗の、どのゴンドラの、どの棚で、何が売れ、何が売れていないのか”を可視化する仕組みです。

PASとは棚割を可視化することで、売上や粗利高、ロス率など様々な切口で店舗の課題発見から改善策を分析できるツール。©Ajis

 私たちエイジスグループは、年間延べ19万店舗で、約4,500万本のゴンドラをカウントし、総額約4.8兆円分の商品の棚卸を1年間で実施しています。この棚卸をする際には全ての店でフロアマップを使い、店舗の“平面図”を把握し、棚卸で商品をカウントすることで個別の商品が、どのゴンドラの、何段目の、左から何番目に並んでいるかの“立面図”データも保有しています。
 
 PASではこの膨大な棚卸データを起点に、販売の結果であるPOSデータと、その他若干の任意データをお客様からお借りすることで調査・分析を可能にします。

エイジスが棚卸する年間4.8兆円分の商品から得た膨大なデータを元に、売場の実態の分析・把握を可能にする。©Ajis

 例えば、単店のデータであれば大中小分類で深掘りすることで、店内のどのスペースのPI値(1000人当たりの販売点数)が高いか、低いかのヒートマップを作成したり、複数のゴンドラにまたがるカテゴリーであれば、どのゴンドラに売れ筋商品があり、どのゴンドラにそうでない商品が多いかの確認できます。

 1本のゴンドラ分析では同じ棚のABC分析をすることで、売上の8割が集中する「ゴールデンライン」にCランクの商品が集中している!?、なんてことも一目で分かります。買い物する目線にC商品では大きな売上は期待できません。

 PASでは粗利やロスのクロス分析も可能です。このようにドリルダウンしたデータを、自社のパソコンでビジュアルで認識することで単店のカテゴリー別の売上高、粗利高、PI値などの深掘りは可能になります。

SKUと位置情報をキーに、棚卸データとPOSデータを組み合わせて店舗を可視化し、最適な棚割を実現するための分析をサポートします。©iStock

 営業本部、店舗運営部の立場からすれば、同一エリアの同規模店で好調を維持する店と、そうでない店のギャップが気になるはずです。課題店とモデル店、平均的な店のデータを比較することで問題を発見する手法はチェーンストアの数値分析の“王道”です。

 最初に店舗を特定し、売上高の大中小の分類へと掘り、小分類のA商品、B商品などの売れ筋商品の店ごとの“ある無し”をPAS で調べてみましょう。売上が計画通り進捗していない店舗の“売れ筋商品の欠落”などはよく目にすることです。

 必要ならばコロナ禍で新規導入した分類について、PASを使って課題店とモデル店の棚割りをゴンドラ1本ごとに比較をしてみることもできます。売上高、粗利高、PI値の店舗比較でニューノーマルの“勝ちパターンの品揃え”に近づくことができます。

調査・比較・分析を行い、売れ筋商品が並ぶ”勝ちパターンの棚割”を実現しよう。©iStock

 如何でしたでしょうか? 売場の“アップデート=最新の勝ちパターン”のスタートは、このようなリサーチ(分析・調査)からスタートするべきと考えます。ニューノーマルの新しい店へのリモデルはここから出発します。

 コロナ禍による変化の激しい時代に、エイジスは店舗をあるべき姿に直すための”軌道修正のツール”として、小売店が抱える問題に少しでもお役に立つ事ができればと考えています。少しでも興味を持たれましたらご相談いただけると幸いです。

 次回は、「この“アップデート”を売場で実際にどう実行するか?」を提案させていただきます。


コラム執筆 / 三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品業業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる


 

お問い合わせ先  
エイジスマーチャンダイジングサービス株式会社
TEL 0120-982-449
URL https://www.ajis.jp/contact/service/

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