Newsletter from California, USA 「リテール新時代」

 エイジス米国カリフォルニアオフィスのドーリングです。アメリカの最新情報とビジネス動向をお届けいたします。

 近年のパンデミックによる規制や消費者動向の変化は、社会の在り方や小売業に大きな影響を与えました。この衝撃は、今後何年にも渡って有益な進化を促し、リテールは 「新時代」 に突入しています。

リテール新時代において、米国で重要視されているファクターをご紹介いたします。

オムニチャネル戦略

 リアルとデジタルの融合が浸透する中で、消費者の需要や期待は多様化しています。様々なチャネルで新規顧客を獲得し、リピーターを増やして競合に打ち勝つために、オムニチャネル戦略の強化が求められます。

 eコマース拡大に伴い、米国では実店舗なしでチェーン展開を拡大するリテーラーが増加傾向にあります。

 スーパーマーケットチェーン米クローガー(Kroger)は、店舗をオープンすることなく、オートメーション倉庫とマイクロフルフィルメントセンターによるeコマースモデルとしてフロリダ州に参入しました。同様の戦略でニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州にも進出する計画で、より収益性の高いeコマースビジネスとして展開する方針です。

©Kroger

 米オピー(Opie Grocery Stations)は、最高速のコンビニエンス食料品店と称する24時間営業のドライブスルー・グローサリーをサウスカロライナ州にオープンしました。事前のオンライン注文やピックアップ時間指定の必要はなく、いつでも便利に使えるハイテクなダークストアモデルとして、忙しい子育て世代やシニア世代の需要に応えるコンセプトです。

 スポーツ用品チェーン米アンダー・アーマー(Under Armour)は、売上の低い店舗をクローズしてDTC戦略を加速し、eコマース売上は前年比50%以上に増加しました。

 一方で、DTCからスタートした家具eコマース米ウェイフェアー(Wayfair)は新たに3店舗をオープンする予定で、ミレ二アルやZ世代に人気のサステナブル天然素材シューズDTC米オールバーズ(Allbirds)は33店舗に展開拡大しており、双方向でのリアルとデジタルの融合が顕著です。

©Allbirds, Wayfair

 仮想空間という新たなチャネルも登場し、世界のメタバース(共有仮想世界)市場は、2026年までに416億ドルに達すると予測されています。(Strategy Analytics 参照)

 米ナイキ(Nike)は、世界で3億5千万人以上のユーザーを持つ人気ゲームプラットフォームのフォートナイトでナイキシューズを購入してアバターに着用出来るメタバースビジネスに参入し、ゲームプラットフォームのロブロックスにデジタルスペース 「ナイキランド」 を設け、仮想空間でスニーカーやアパレルを販売する計画です。

 米ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)は、アバターの友達と一緒に衣装や限定アクセサリーの試着購入が可能な仮想空間デジタルコレクション 「ポロショップ」 をロブロックスに開設し、デジタルプロモーション 「ザ・ウィンター・エスケープ」を行い、メタバース市場に乗り出しています。

©Ralph Lauren

 ラルフ・ローレン動画はこちらをクリック   

 オムニチャネルは、ヘルスケア市場にも広く浸透しています。

 米アマゾン(Amazon)による処方薬宅配 「アマゾン・ファーマシー」 に続き、ドラッグストアチェーン米CVSファーマシー(CVS Pharmacy)、米ウォルグリーン(Walgreens)は、処方薬のオンライン注文同日配送を提供しています。オンラインでの定期的な再購入や質問も可能で、処方薬の情報や服用履歴、価格を確認することも出来ます。

 米ウォルマート(Walmart)は、有料のウォルマートプラス(Walmart +)サブスクリプションのメンバーに無料および割引の処方薬宅配を提供し、リモート医療サービスやパーソナライズされたケアシステムを強化しています。

 スーパーマーケットチェーン米ハイヴィー(Hy-Vee)は、仮想栄養士サービス 「ヘルシー」 を立ち上げ、登録栄養士によるオンラインクラス、栄養目標と健康ニーズに沿った食事プランを提供する有料プログラムや栄養カウンセリングなどを提供し、処方薬の無料宅配やメンタルヘルスのリモート治療などを行うオンライン薬局サービス 「レッドボックスRx」 を開始しました。

©Hy-Vee

 リテーラーは様々なチャネルでビジネス展開し、これまでにデジタル化されていない分野にも積極的にチャネルを広げていく姿勢が求められています。

テクノロジー投資

 オムニチャネルによるハイブリッドな小売モデルが浸透するリテール新時代では、各チャネルの消費者動向や購買情報、アイテム情報など莫大なデータの収集管理や分析統合、AI活用による価格設定や需要予測、シェルフ管理、プロモーション戦略、消費者ターゲティング、食品安全性向上、機器メンテナンスなど、テクノロジー投資が活発です。

 ホームセンターチェーン米ホーム・デポ(The Home Depot)は、グーグルクラウド 「ビッグクエリ(BigQuery)」 によるタイムリーなデータ解析を2千カ所以上のアイテムロケーションや在庫状況可視化に役立てており、DIYプロジェクトに最適なアイテムを紹介するAI機能をアプリ提供しています。

 米アルバートソンズ(Albertsons)は、米Symphony RetailのAIプラットフォームによるデータ解析や顧客インサイトをオーダーや在庫管理、追跡、ロイヤリティープログラムに応用し、米ウォルマートは、米Focal Systemsと協力したシェルフカメラネットワークによるリアルタイムのコンピュータービジョンシステムを試験運用中です。

©Focal Systems

 リテールのロボティクス導入においては、クリーニングロボット、セキュリティーロボット、UV発光除菌ロボット、調理ロボット、シェルフスキャンロボット、倉庫/フルフィルメントセンター作業ロボットに加え、配送サービスロボットへの投資が目立ちます。

 米セブン-イレブン(7-Eleven)は、ロボティクス企業米Nuroと提携した自動運転車とロボットによる宅配サービスをテスト開始し、米ブロード・ブランチ・マーケット(Broad Branch Market)は宅配の約半数をロボット配送し、米ベスト・バイ(Best Buy)は、カーブサイドピックアップ商品を運ぶロボットカートをテスト中です。

©Board Brunch Market, Evy Mages

 リテール新時代では、小売メディアネットワークが続々と登場し、リテールメディアは今年に500億ドル市場に成長すると予測されています。(Forrester 参照)

 米ウォルマートを筆頭に、米ターゲット(Target)、米メイシーズ(Macy’s)、米ダラー・ツリー(Dollar Tree)、米コストコ(Costco)、米クローガーなど大手小売チェーンは、自社ウェブサイトやアプリの広告スペース販売など小売業にとって新しい収益源となる広告フォーマットやメディアネットワークを展開し、広告ビジネスプラットフォームに投資しています。

©Ad Age

 業種を超えて拡大するレジレス決済やスキャン&ゴー決済など、コンタクトレス決済ニーズや決済オプションの多様化に対応するためのテクノロジー投資も増加傾向です。

 米アマゾン傘下の米ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)は、アマゾンのJWO(ジャスト・ウォーク・アウト)テクノロジー導入を始め、今年オープンする2店にも導入予定です。JWOを導入した米スターバックス(Starbucks)の新しいストアコンセプト 「スターバックス・ピックアップ・アンド・アマゾン・ゴー」 もテスト開店し、コンビニや小型店に加えて大型店や飲食店に広がりつつあります。

©Starbucks, Amazon Go

 ホームセンターチェーン米ロウズ(Lowe’s)は、部屋のスキャンや測定、バーチャル設置や見積りなどの機能により、快適で手軽なリフォームやデコレーションをシームレス体験出来るサービス 「メジャー・ユア・スペース(ベータ版)」 を開始し、LiDARスキャナー、AI、MR(複合現実)などテクノロジー投資を続け、未来の空間コマース実現に向けて動いています。

 米アマゾンや米ウォルマートが開発中のテキストによる会話型コマースや音声コマースなど、消費者と繋がる新しいテクノロジーへの投資も活発化することが見込まれます。

©Lowe’s

 「メジャー・ユア・スペース(ベータ版)」 動画はこちらをクリック

 eコマースとコンタクトレス体験の需要増加により、デジタルカスタマーサービス(オンライン接客)への投資も顕著です。

 米ベスト・バイは、流通センターを仮想ストアに見立て、商品知識をもつアソシエイトによるオンライン通話、画面共有やライブデモなどのオンライン接客をテスト中です。

 ジュエリー小売チェーン米ジャレッド(Jared)は、オンラインで高額なアイテムを購入する抵抗を和らげるため、ジュエリーコンサルタントとリアルタイムビデオ通話できるサービスやオンラインウェディング体験サービスを提供しています。

 リテール新時代の顧客エクスペリエンス向上において、店舗従業員やリモートアソシエイトがウェブサイトやアプリを通じて消費者と繋がるオンライン接客は、今後さらに浸透することが見込まれます。

©Jared

サステナブルリテール

 消費者のサステナビリティー関心は高まっており、リテールの持続可能性と倫理的慣行は、計画から実行モードに移行しています。

 パッケージングやフードロスの改善、地球環境に配慮したカーボンニュートラルな店舗デザイン/運営、エコフレンドリーな配送、セカンドハンド商品やエシカルな食品の販売強化、リサイクル活動やクリーンエネルギー利用など、サステナブルリテールとしての具体的なアクションが求められています。

 米コールズ(Kohl’s)は、全米に163のソーラーアレイを設置し、各店舗の75%の電力需要を満たす太陽光エネルギーシステムを推進中です。米クローガーは、カーボンニュートラルな環境で製造された卵の販売を開始し、米ホールフーズ・マーケットは、発砲スチロール製のミートトレイやプラスチックストローを廃止しました。

©Kohl’s

 スーパーマーケットチェーンのアルディ(Aldi)は、段ボールや破損したパレット、バッテリーや電子機器のリサイクル活動や植物由来食品の販売強化、廃棄物削減策を積極的に展開し、ガラス製容器の再利用を奨励中です。

 米ウォルマートは、2025年までに自社プライベートブランド製品に100%リサイクル可能なパッケージ使用を約束し、サプライヤーにリサイクル市場構築の協力を呼び掛けています。

 事務用品チェーン米ステープルズ(Staples)は、森林管理協議会(FSC)やエナジー・スターに認定された環境基準で製造されたアイテムの取り扱いを強化し、環境に配慮した製品の売上は全体の30%に達しています。

 リテールのサステナビリティー活動を評価する動きは強まっており、グリーンなサステナブルリテールを目指すことは、リテーラーにとって倫理的な選択であるだけでなく、賢明なビジネス決定でもあります。

©Staples

 リテール新時代では、消費者と価値を共創し、より良い社会と便利なライフスタイルに貢献する姿勢が広く支持されるでしょう。

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