Newsletter from California, USA 「米国流通業界の注目トレンド」  

 エイジス米国カリフォルニアオフィスのドーリングです。
アメリカの最新情報とビジネス動向をお届けいたします。

 パンデミックにより大きく変化した社会で、小売を取り巻く流通業界は進化し続けています。消費者が好むライフスタイルを徹底的に追求し、地球環境問題やサステナビリティに配慮した取り組みは、トレンドとして社会に急速に浸透しています。

 さらなる成長が期待される、米国流通業界の注目トレンドをご紹介いたします。

<植物由来食品(Plant-based Food)>
 フードテクノロジーの進歩により、植物性原料から作られた代替ミートや代替ミルクなどの植物由来食品が続々と登場し、全米に広く普及しています。
昨年の米国の植物由来食品売上は前年比27%増の70億ドルに達し、一般食品売上の約2倍の成長率です。(Plant Based Food Association参照)

 米国では1,000万人以上が植物性の食事療法を行い、消費者は日頃の食生活に植物由来食品を取り入れる手軽な方法を求めています。ファストフードチェーンやカフェチェーン、レストランでは、代替ミートを使用したバーガー、タコス、ナゲット、サンドイッチや、代替ミルクを使用したドリンク、デザートなど、身近で親しみやすい植物性メニューが人気です。

 最大手SMチェーン米クローガー(Kroger)、米ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)、米スプラウツ・ファーマーズ・マーケット(Sprouts Farmers Market)は、代替ミートや代替ミルク、代替エッグ、代替チーズといった定番商品に加え、ソース、マヨネーズ、調理済み冷凍食品、ミールキットなどの広範な植物由来食品を取り揃え、売場拡大中です。

© Supermarket News

 米タイソン・フーズ(Tyson Foods)やネスレ(Nestlé)などの食品メーカー大手や、米グッド・キャッチ・フーズ(Good Catch Foods)、米ニュー・ウェーブ・フーズ(New Wave Foods) などの新鋭食品メーカーは、乱獲により世界の魚資源が枯渇する状況を踏まえ、植物や海藻由来の代替フィッシュや代替エビ、代替カニ、代替貝類の市場シェア拡大を図り、植物由来シーフードの開発展開を積極的に推進しています。

 植物由来食品専門のヴィーガンレストランやヴィーガンeコマースも増加傾向にあり、植物由来食品の世界市場は2040年までに4,500億ドル規模に成長すると予測されています。(Kearney参照) 地球環境問題やサステナビリティ意識の高まりにより、植物由来食品ブームは拡大する流れになるでしょう。

 

© The New York Times

<インドア・ファーム(Indoor Farm)>
 インドア・ファーム(屋内農場)は、植物由来食品市場の拡大、食品の安全性、一貫性、サステナビリティ、農業効率化の観点から、必然的に拡大傾向にあります。

 省スペースで年間を通した栽培が可能なインドア・ファームは、頻繁に起こる干ばつや洪水、暴風雨などの異常気象による被害を防ぎ、水やエネルギー資源使用を削減する持続可能な農法です。パンデミックによるサプライチェーン問題や労働者不足も相まって、インドア・ファームの垂直農法は2027年までに190億ドル市場に成長すると予測されています。(Global Market Insights参照)

 

© AeroFarms

 管理された環境と在庫供給量を持つインドア・ファームは、販売価格や品質、納期の一貫性を求める小売チェーンにとって、利益主導を支える新たなインフラとなります。農薬無使用や使用量の少ないインドア・ファームは、自社製品の農薬排除を目標に掲げるメーカーやオーガニック食品を強化するリテーラーにとって、メリットが高いと言えます。

 米クローガー、米ホールフーズ・マーケット、米セーフウェイ(Safeway)、アルディ(Aldi)は、  インファーム(infarm)と提携した屋内栽培システムを導入し、大手チェーンに加えて小規模チェーンや独立系企業も様々なインドア・ファームと提携した屋内栽培農産物の販売を進めています。

 インドア・ファーム農産物の多くは現場でパッケージされることが多いため、スーパーマーケットの農産物セクションにパッケージ化されたアイテムが増え、ブランド化される傾向も見られます。
 インドア・ファーム農産物を創造的な方法で商品化し、新たなブランドとしてカテゴリー化することは、小売チェーンに新たな商機をもたらすでしょう。

© infarm

<リサイクル市場(Second-hand Market)>
 パンデミック以来、消費者の半数以上がお金の浪費と環境廃棄物に反対し、価値の追求や持続可能なライフスタイルへの関心が高まっています。アパレル業界を筆頭に拡大するリサイクル市場は、今後5年間で倍増して770億ドル規模に成長すると予測されています。(GlobalData参照)

 アパレルブランド米ギャップ(Gap Inc.)、スポーツウェアブランド米ファブレティックス(Fabletics)は、米スレッドアップ(ThredUp)と提携した再販ビジネスを強化しています。スレッドアップは、ブランドやリテーラーに 「リセール・アズ・ア・サービス(RaaS)」 を提供する再販プラットフォームで、米ウォルマート(Walmart)、デパートチェーン米メイシーズ(Macy’s)、米JCペニー(JCPenney)など20以上の小売チェーンが導入しており、リサイクル市場拡大を後押ししています。

 

©JCPenny

 家具量販チェーンのイケア(IKEA International Group)は、使用済みのイケア家具を買い戻してストアクレジットと引き換え、使用済み家具を割引価格でリサイクル販売するサービス 「バイ・バック&リセル(Buy Back & Resell)」 をフィラデルフィア州の店舗でテスト中です。将来的に全米の店舗でサービス開始する計画で、リサイクル市場に積極的に参入する方針です。

 自社ブランドの卵の発砲スチロールパックを100%リサイクル新聞紙や再生紙によるパルプカートンに改善したSMチェーン米ウェグマンズ(Wegmans)など、商品に再生可能またはリサイクルされた素材を使用する企業も増えており、リサイクル市場への取り組みはビジネスに不可欠となることが見込まれます。

<後払い決済(Buy-now-pay-later / BNPL )>
 後払い決済(BNPL)は、次世代のフレキシブルな支払いオプションとして、昨年に比べて81.2%急増しています。(eMarketer参照)米国オンライン購入者の約5分の1がBNPLを利用し、2025年には3分の1に上ると見込まれており、BNPLサービスを取り入れる企業やリテーラーが増加中です。

 メンバーシップ型ディスカウント小売チェーン米BJ’sホールセール・クラブ(BJ‘s Wholesale Club)は、必要なものを必要な時に購入したい消費者が柔軟な支払いプランを選択できるよう、新たなBNPLサービス 「シチズンズ・ペイ(Citizen’s Pay)」 を開始しました。
 メンバーは、電化製品や日用品など99ドルを超える購入に対して月額定額の分割払いを申請することが出来、クレジットカード使用や高金利を好まない消費者に向けて、利便性と価値を提供する試みです。

©JRI

 米ウォルマートは、全米約4,000店のスーパーセンターとWalmart.comで、フィンテック企業米アファーム(Affirm)と提携したBNPLサービスを開始しています。
 高級デパートチェーン米ニーマン・マーカス(Nieman Marcus)もアファームによるBNPLサービスを取り入れており、米アマゾンは、50ドル以上購入の際に無利子で柔軟な分割払いオプションを提供するアファームによるBNPLソリューションをテスト中です。

 ペット用品チェーン米ペトコ(Petco)は、フィンテック企業クラーナ(Klarna)による4回の無利子分割払いが可能なBNPLサービス 「ペイ・イン・フォー(Pay in 4)」 を全米約1,500店舗で開始しました。
 米ターゲット(Target)、米CVSファーマシー(CVS Pharmacy)、米ナイキ(Nike)、米ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)、米ノードストローム(Nordstrom)、米セフォラ(Sephora)は、フィンテック企業アフターペイ(Afterpay)と提携したBNPLオプションを提供しています。

 BNPLサービスを導入するブランドや小売チェーン、ショッピングサイトは急スピードで増加しており、若年層のクレジットカード離れやeコマース拡大とともに、BNPL市場の成長は続くことが予想されます。

 

© Walmart

<ゴースト・キッチン(Ghost Kitchen)>
 ゴースト・キッチンは、クラウド・キッチンやダーク・キッチンとも呼ばれ、テイクアウトとデリバリーに特化した調理拠点コンセプトです。 パンデミック以来、ファストフードチェーンやレストラン業界だけでなく、ゴースト・キッチンを店舗内に展開する小売チェーンが増えています。

 米ウォルマートは、米ゴースト・キッチン・ブランド(Ghost Kitchen Brand)が運営するゴースト・キッチンを9月にニューヨーク州の店舗内にオープンし、来年にかけて数十店舗に拡大する計画です。顧客はタッチスクリーンで約15ブランドの様々なメニューをまとめて注文することが可能で、バラエティに富んだ食事メニューを提供するバーチャルフードコートとして積極的に展開する方針です。

 米クローガーは、昨年に一部店舗でテスト導入したゴースト・キッチンに加えて、今秋、クラウド・キッチンスタートアップ米キッチン・ユナイテッド(Kitchen United)と提携したゴースト・キッチンコンセプト 「ミックス(Mix)」 をロサンゼルスの店舗内にオープンすることを発表しました。大型ショッピングモール米ウェストフィールド(Westfield Group)も、同スタートアップと提携した 「ミックス」 をモール内にオープンし、展開を拡大していく計画です。

 

©The Kroger Co.

<スキャン&シップ(Scan & Ship)>
 スキャン&シップは、店頭で実際に商品を見て購入を決めた後、自分で家に持ち帰るには大きくて面倒な商品をスマートフォンでコンタクトレスに配送手続き出来るサービスです。

 米ウォルマートが所有するメンバーシップ型ディスカウント小売チェーン米サムズ・クラブ(Sam’s Club)は、店頭でのコンタクトレスショッピング体験を向上させるため、スキャン&シップのテスト導入を開始しました。コンタクトレス決済システムのスキャン&ゴー決済時に、スキャン&シップによる配送サービスのセレクトが可能となり、より便利なサービスを提供することでコストコなどの競合チェーンとの差別化を図る方針です。

© Sam’s Club, CNET

<ラストマイル・ソリューション(Last-mile Solution)>
 デジタル社会でリテーラーのオムニチャネル化が進み、宅配ソリューションが急速に向上していることは周知の事実です。
 米ターゲットは、2017年に買収したオンライン同日配送プラットフォーム米シップト(Shipt)による宅配サービスに新たな特典や満足度スコアを表示する機能を加え、デリバリーサービスのクオリティーを強化中です。

 米ウォルマートは、他企業に向けた宅配サービスを提供する 「ゴーローカル(GoLocal)」 の立ち上げを8月に発表しました。競争力ある価格設定と効率良い配送システムにより、自社での宅配が困難な中小企業にデリバリーソリューションを提供する戦略で、ゴーローカルは米国の配送事情を大きく前進させる可能性を秘めています。

©Walmart

 GoLocal 動画はこちらをクリック 

 全米で約2,300店を展開するSMチェーン米アルバートソンズ(Albertsons)は、ギグワーカーによるオンデマンド配送プロバイダー米インスタカート(Instacart)と新たなパートナーシップを組み、40店舗で宅配用の商品ピックアップを強化するテスト中です。また、8月からサブスクリプション型配送サービス 「フレッシュパス(FreshPass)」 を開始し、デリバリー市場に積極的にアプローチしています。

 ロボットによる配送サービスも着実に進行しており、米アマゾン、米セーフウェイ、米セーブ・マート・スーパーマーケット(Save Mart Supermarkets)、米グラブハブ(Grubhub)など、多くのリテーラーや配送プロバイダーがロボット配送のテスト導入中です。テキサス州のコンビニチェーン米アーバン・バリュー・コーナー・ストア(Urban Value Corner Store)は、8月に米Vroom Deliveryと提携した配送ロボット導入を発表しました。

 米ウォルマートは、大手自動車メーカー米フォード(Ford Motor Company)と自動運転テクノロジースタートアップ米アルゴAI(Argo AI)と提携し、自動運転テスト車両による宅配サービスを今年後半に開始する計画です。

 オンデマンド配送プロバイダー米ドアダッシュ(DoorDash)は、追加料金無しで異なる2つのリテーラーの注文をまとめて同時に配送するサービス 「ダブルダッシュ(DoubleDash)」 を8月に開始し、好評を得ています。

 便利なデリバリーサービスを利用する消費者は増え続けており、あらゆる業種のリテーラーにとって、ラストマイル・ソリューションの強化と向上が求められています。

 

© Urban Value Corner Store

 より良い未来とライフスタイルを追求する姿勢が新たなビジネス機会を生み出し、トレンドを牽引していると言えるでしょう。

以上

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