











Newsletter from California, USA 「RaaS – リテール・アズ・ア・サービス」
エイジス米国カリフォルニアオフィスのドーリングです。アメリカの最新情報とビジネス動向をお届けいたします。
デジタル社会での購買オムニチャネル化やDTC(消費者直販)モデル増加により、小売流通業の在り方が見直され、店舗の新たな活用法やリテールの新しいサービスが続々と登場しています。
RaaS(小売のサービス化)に取り組み、前進を続ける北米リテールの事例をご紹介いたします。
<体験提供サービス>
eコマースでショッピングが完結するデジタル社会において、リアル店舗は 「体験」 にフォーカスしています。
スポーツ用品チェーン米ディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)は、サッカーやゴルフ、ロッククライミング、バッティング、ヨガなどの体験施設を備えたマルチスポーツ体験コンセプト店舗 「ハウス・オブ・スポーツ」 をニューヨーク郊外にオープンしました。
駐車場の一部は、競技フィールドやスケートリンクに活用してスポーツチームに貸し出す予定です。

©Dick’s Sporting Goods
テキサス州のショッピングモール、ハイランド・ヴィレッジは、インテリアチェーン米Zギャラリー(Z Gallerie)を特殊効果企業と提携したAR体験施設に生まれ変わらせ、同州のショッピングモール、ヴィレッジ・アット・ウェスト・オークスは、日用品チェーン米ベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)を 「Seismique」 と呼ばれる体験型美術館に置き換え、モールの集客向上に貢献しています。

©Seismique
カリフォルニア州に初出店したアウトウェアブランドストア、グース(Goose)は、強風や寒い環境での着心地や機能性を体験出来るように、室温マイナス20度のスノールームを設けています。同州ロサンゼルスのダイソン(Dyson)デモストアは、店舗でのダイソン商品体験に加えて、オンラインで商品体験するバーチャルツアーサービスを展開中です。

©Goose
<スペース提供サービス>
DTCモデル増加に伴い、米ベータ(b8ta)や米ショーフィールズ(Showfields)など、ショールームやマーケティング目的のスペース提供サービスや、実店舗展開としてのスペース提供サービスが広がっています。
GMSチェーン米ターゲット(Target)は、店舗内にメーカー独自店舗スペースを提供するショップ・イン・ショップサービスを拡大中です。テナントの店舗スペースレンタルと異なり、アップルストア、ディズニーストア、リーバイスストア、アルタ・ビューティーストアなどのショップ・イン・ショップでの買物は、ターゲットのキャッシャーでまとめて支払うことが出来ます。
ショップ・イン・ショップのコンセプトで多数のリテールやレストランなどをローテーションで企画運営する米フリー・マーケット(Free Market)は、カリフォルニア州にセカンドロケーションをオープンしました。デジタルネイティブな顧客にアピールするポップアップショップ、セレクトストア、レストラン、バー、ギャラリー、教室、イベントスペースを備え、新たなコミュニティーを形成しています。

©Free Market
シューズ量販チェーン米DSW(Designer Shoe Warehouse)は、シューズ以外のアイテムを揃えるワンストップショップを目指し、カナダの45店舗に帽子やアスレチックウェアを展開する米リッズ(Lids)のショップ・イン・ショップをオープンする計画を発表しました。
<広告ソリューションサービス>
広告事業を拡大する米ウォルマート(Walmart)に続き、リテーラーが次々と広告ソリューションサービスに参入しています。
リテール顧客に直接リーチしてリアルタイムな購買促進の機会を求めるメーカーや企業に向けて、ホームセンターチェーン、SMチェーン、ドラッグストアチェーンなど、様々なリテールチェーンがセルサイド広告ネットワークサービスを強化しています。
ダラーストアチェーン米ファミリー・ダラー(Family Dollar)は、FamilyDollar.comとモバイルアプリの広告ネットワークを立ち上げ、ファミリー・ダラーの顧客に向けたクーポン配信やプレミアム広告、カテゴリー販促、スポンサー付き検索、パフォーマンス分析など、顧客に直接つながるソリューションを提供し、デジタル広告収益を伸ばす方針です。

©Chesapeake Media Group
米ターゲットは、自社データを利用して作成したクライアント向け広告をTarget.com、ソーシャルチャネル、ビデオチャネル、提携メディアサイトに掲載し、ターゲットの顧客への広告配信や分析レポートサービスを提供しています。ディズニー、マスターカード、CPGブランド、保険会社など約1,000のクライアント企業とパートナーを組み、広告サービス強化のためにデジタルメディア企業の買収も計画中です。
<メディカルサービス>
アメリカでは、リテール店舗内薬局の予防接種資格を持つ薬剤師により、予防接種を受けることが出来ます。
米コストコ(Costco Wholesale)、米ウォルマート、米ターゲットをはじめ、米ラルフス(Ralphs)、米ヴォンズ(Vons)などのSMチェーンや、米ライト・エイド(Rite Aid)、米ウォルグリーンズ(Walgreens)などのドラッグストアチェーンは、新型コロナワクチン接種場所として接種普及に貢献しています。
ドラッグストアチェーン米CVSファーマシー(CVS Pharmacy)は、ヘルスケア産業のリーダーとして、人々、企業、コミュニティー、地球の4つのカテゴリーの健康促進にフォーカスする戦略 「トランスフォーム・ヘルス 2030」 を発表しました。
血圧、コレステロール値、血糖値、肥満度指数測定とナースによるメディカルアドバイスを提供する無料健康診断サービス 「プロジェクト・ヘルス」を拡張し、女性向けの健康ウェルネスサービスとして、心臓診断、メンタルヘルスカウンセリング、セラピーサービスを新たに開始しました。テレヘルスサービス「Eクリニック」 によるリモート医療も強化中です。

©CVS Health
米ウォルマートは、リモート医療とメンタルヘルスケアサービスを提供するリモート医療企業MeMDを買収しました。ウォルマートヘルスケアにリモート医療を追加して、顧客に革新的でシームレスなウェルネスサービスを提供する戦略です。
<コンタクトレス決済サービス>
米アマゾンによるレジレス店舗アマゾン・ゴー (Amazon Go) を筆頭に、アプリによるスキャン&ゴー決済やスマートカートによるコンタクトレス決済が普及しています。
コンビニ&カフェチェーン米チョイス・マーケット(Choice Market)は、テクノロジー企業AiFiと提携したスキャン&ゴー型レジレス店舗をコロラド州にオープンしました。同チェーンは、地元の高品質な生鮮食品を扱うローカル重視コンセプトにカフェを併設し、コンビニエンスの再発明をモットーに最新テクノロジーを続々と導入しています。

©Choice Market
最大手SMチェーン米クローガー(Kroger)は、テクノロジー企業Caperのスマートカートによるスキャン&ゴー型コンタクトレス決済 「クローゴー(KroGO)」 をテスト導入中です。米アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)で導入されているスマートカート 「アマゾン・ダッシュカート」 は、スキャン無しでカートに商品を入れるだけで良い手軽さが人気です。

©Amazon
米アマゾンのジャスト・ウォークアウトやアマゾン・ワン(手のひら決済)テクノロジー、米グラバンゴー(Grabango)、米ジッピン(Zippin)、米アクセル・ロボティクス(Accel Robotics)のコンタクトレス決済テクノロジーなど、今後はライセンス提供による導入が加速することも考えられます。
<ライブストリーミング & ライブコマースサービス>
eコマース市場拡大と売上増加に伴い、ライブストリーミングやライブコマースサービスが注目されています。リアルタイムで顧客とコミュニケーションして商品購入を促し、同時に多くの顧客情報を収集することが出来ます。
デパートチェーン米ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)は、人気ブランドのサマー・コレクションを披露販売するライブストリーミングイベントを開催しました。
視聴者はリアルタイムで会話しながらショッピングを楽しみ、イベント中に商品購入した先着50名にパーソナライズされたギフトプレゼントなど、ファンやリピーター獲得のための様々なプロモーションが施され、メイクアップ講座や料理レッスン、フィットネスやファッション関連など様々なライブストリーミングイベントが企画されています。

©Shopify
シューズチェーン米アルドー(Aldo)は、人気スタイリストとTikTokスターを起用した商品紹介ストリーミングイベントを行い、ペット用品チェーン米ペトコ(Petco)は、ペットのファッションショーと犬の養子縁組を合わせたストリーミングイベントを開催するなど、ホームセンターチェーンや美容メーカー、各ブランドが多彩なストリーミングイベントを実施しています。
消費者市場調査グループ米Coresight Researchによると、アメリカのライブストリーミング市場は今年末までに110億ドルに達し、2023年までに250億ドルを超える可能性があると見込まれています。
<ラストマイル配送サービス>
米アマゾンを筆頭とするeコマース勢力に対抗するため、リテーラーは手頃な価格で同日配送を実現するためのラストマイル配送の課題と向き合っています。
SMチェーン米アルバートソンズ(Albertsons)は、米スタートアップTortoiseと提携したAIに依存しないリモートオペレーター型自走配達車両のテストを開始しました。米ウォルマート、米クローガー、米CVSファーマシー、米ドミノ・ピザは、米スタートアップNuroと提携した自走配達車両による食料品や処方箋のテスト配達中です。

©Walmart
米クローガーは、ドローンによる食料品配達をテスト中です。米アマゾンと米ウォルマートのドローン配送は住所への配達ですが、クローガーのドローンはスマートフォンロケーションに配達可能なため、公園でのピクニックやビーチ、広い会場などにドローン配達出来るようになる見込みです。

©Kroger
<その他様々なサービス>
コンビニチェーン米サークルKは、飲料サブスクリプションサービス 「Sip & Save」 を一部エリアで開始しました。月額5.99ドルで毎日1杯のコーヒー、ティー、フロスタースラッシュやソーダを飲むことが出来る定期購入サービスで来店動機を高める狙いです。
アパレルチェーン米ルルレモン(Lululemon)は、サステナビリティー取り組みの一環として、使用済みのルルレモン衣料を下取りしてeギフトカードに交換するトレードイン再販サービス 「Like New」 をテスト実施中です。グローバルブランドH&Mは、アメリカで初となるスーツの24時間レンタル無料プログラム 「ONE/SECOND/SUIT」 を立ち上げ、就職面接に臨む人達をサポートするサービスをテスト開始しました。
米ウォルマートは、eコマースのファッションカテゴリー強化として、仮想試着テクノロジーを開発するスタートアップZeekitを買収し、顧客がアイテムをバーチャル試着出来るサービスを準備しています。バーチャル試着の仮想イメージを共有して、家族や友人に意見を聞くことも可能になり、オンラインショッピング体験をよりソーシャルにして競争力を高める試みです。

©Zeekit
リテールが持つ顧客ベースやデータ活用、テクノロジー導入により、リテール業界の未来は大きく変わろうとしています。
サービスを自社利用するだけではなく、RaaSとして他社に提供するビジネスモデルの成長も見込まれるでしょう。