











Newsletter from California, USA「ビジネスモデルの転換」
エイジス米国カリフォルニアオフィスより、アメリカの最新情報とビジネス動向をお届けいたします。
新型コロナウイルスの世界的流行により、規模を問わず多くの企業が事業計画の見直しを迫られています。
仮にパンデミックが収束しても売上が元に戻るとは限らず、売上がわずかに減るだけで利益が激減する傾向が見受けられます。
売上高の減少にどのように対応できるかどうかが重要なポイントとなり、「ニューノーマル下の経済に対応できるビジネスモデル」 を確立できた企業が生き延びることになるでしょう。
北米では、コロナ禍で変化し続ける消費者の買物行動に対応する 「デジタル化」と「ビジネスモデルの転換」 が強く求められています。
- リアル店舗のビジネスモデルを再構築する
米スターバックス(Starbucks)は、コロナ収束後も店内飲食を求める顧客数は以前の水準には戻らないと予測し、今後1年半で北米の既存店舗を最大400店舗閉店することを発表しました。
郊外エリアでは、カーブサイドピックアップ(オンライン注文決済後のドライブスルー受け取り)などの テイクアウト(to-go)モデルを各店で強化し、ニューヨークやシカゴ、シアトルやサンフランシスコといった人口密集エリアでは、テイクアウト専門の新しいモデル店舗を拡大していく意向です。
顧客はスターバックスのアプリからピックアップする前にオンライン注文決済し、店頭で並ぶことなく快適に受け取ることが出来ます。
アプリのリワード(ポイント)機能も好評で、さらに顧客の利便性を追求していく方針です。

スターバックス画像 ©Starbucks
- オンライングローサリー(ネットスーパー)市場を開拓する
北米のeコマース市場で成長率が高いカテゴリーは グローサリー(食品雑貨)です。
米最大手リテールチェーンのウォルマート(Walmart)は、アマゾンエフェクト以降デジタル化を大推進して成長を続けていますが、新たに「ウォルマートプラス(Walmart+)」というオンライングローサリーのメンバーシップサービスを7月中にローンチ予定です。
年会費を支払うことにより、無制限でウォルマートスーパーセンターからグローサリーの注文同日配送サービスやウォルマートガソリンスタンドの割引サービス等が利用可能になる予定で、アマゾンプライムのメンバー会員やコストコのメンバー会員をウォルマートプラスに引き寄せることが目的です。
ウォルマートのeコマース(Walmart.com)は、4月のページビュー(ページアクセス数)が前年比およそ2倍となり、第1四半期のeコマース売上高は74%増となっています。
- 店頭ピックアップサービス強化による売上高アップ
米大手GMSチェーンのターゲット(Target)は、カーブサイドピックアップ(オンライン注文決済後のドライブスルー受け取り)可能な商品に、生鮮食品や冷凍・冷蔵食品(野菜、果物、乳製品、肉類、ベーカリーを含む)を計750アイテム追加しました。
ターゲットは、デリバリー企業のシップト(Shipt)と提携した注文同日配送のeコマースサービスが人気ですが、同日配送可能な生鮮食品やグローサリーの品揃えに限りがあったため、ピックアップで対応可能にして消費者のニーズに応えています(2020年7月時点で約400店舗にて実施後、1500店舗に拡大予定)。
結果的に、ピックアップにより日常必需品を安全に簡単に買物できることで消費者を頻繁に店舗に呼び戻し、ターゲット側のマージン減少もミニマムで済むことから売上も向上しています。

ターゲット画像 Courtesy of Supermaket News, Houston Chronicle
- コンタクトレスショッピングへのシフト
米大手コンビニチェーンのセブン-イレブン(7-Eleven)は、コロナ禍でのコンタクトレスショッピングのニーズに応えるため、テキサス州ダラス、ニューヨーク州マンハッタンやロングアイランドにある店舗で 「モバイルチェックアウトサービス(スキャン&ゴー)」を開始しました。
モバイルチェックアウトにより、顧客はキャッシャーの列に並ぶことなく、他人と接することなく、店内の買物を短時間で終えることが可能になります。
顧客はアプリを使って自分で商品のバーコードをスキャンして買物カゴに入れ、アップルペイやグーグルペイ、アプリ内に登録したデビットカードやクレジットカードで支払い、支払い終了後にQRコードが表示され、コードをスキャンして買物終了となります。
アプリ内で販促キャンペーン商品と連携することも可能で、バーコードがある商品のほぼすべてに使用可能です(ホットフードや年齢確認が必要な商品等は別途キャッシャーでの購入が必要)。
モバイルチェックアウトは、リアル店舗で他人との接触を避けたい買物客を呼び込む新たなバリューとして注目を集めており、店舗側はキャッシャー業務の店員をカスタマーサービスや他の店内業務に回すことも可能になり、省人化にも繋がります。
また、アプリを通じて顧客の買物志向や購買データ等を得て、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)に活かせるという利点もあります。モバイルチェックアウトサービスは、RFIDタグを使用するチェーンでも活用が進んでおり、テクノロジーの進化とともに顧客が利用しやすい店舗モデルが拡大していくでしょう。

©7-Eleven, Courtesy of Apkpure
- 未来型グローサリー移動販売
米スタートアップ企業カーツブランチ(Carts Blanche)は、コロナ禍で安全にグローサリーを顧客に提供する移動販売モデルとして、モバイルロボティクス・マイクロマーケット 「ベンダマーツ(VendaMarts)」を発表しました。
自動化されたベンダマーツが、プリパッケージされたフレッシュな食品を住宅地やオフィスエリアで販売するもので、費用を抑えて365日24時間リモート管理による稼働が可能で、高い利益を生み出すモバイルプラットフォームモデルとして企業や個人事業主から期待を集めています。
また、米大手リテールチェーンのクローガー(Kroger)も昨年夏に 、“スーパーの一部売場にタイヤが付いて移動できる“ というコンセプトの「ゼロ・ハンガー・モバイルマーケット」 をローンチし、リアル店舗へのアクセスが悪いエリアやシニア層の多いエリアを対象に地元のフードバンクと提携したチャリティー活動や移動販売を行っており、自然災害の多い日本でも参考になる発想と言えます。

ベンダマーツ画像 ©Carts Blanche
「コロナ禍でより加速したデジタル化社会に対応するビジネスモデルの転換を行う」
素早いアクションを起こすことが競合企業との差別化になり、今こそ自社ブランドの価値を向上させる好機会でもあります。
今後、リテール企業が成長し続けるためには、デジタル化への投資と転換が必須だと言えるでしょう。
以上