World Robot Conference 2019(中国北京)レポート1回目(全2回)
さる8月24日、中国北京で開催されたワールド・ロボット・カンファレンス(WRC2019)に行ってまいりました。
すでに今年で5回目、熱気あふれる大会の現地レポートを2回に分けて、お届けします。
☆「世界最大人口」の中国とロボット
中国は人口14億人強(WHO2018年)を超える、一見「働く人に困ることはない国」と思われがちですが、実は猛烈な人手不足に陥りつつあります。
現在、約9億人強いる労働人口が、数年前には減少に転じました。さらに2050年には、労働人口が約7億人まで減少するといわれております。逆に高齢者人口は同時期に4億人を越える試算があり、日本にも迫る超高齢化社会が迫っています。また「一人っ子政策を要因とする高学歴化」、「地方都市の発展」、「賃金上昇」等で、単純労働者の数が減少する一方で、アリババを代表とするECサイトやフードビジネスでのデリバリーサービスを支える「ラストワンマイル」を担う配達員需要が、都市部を中心に急激に拡大し、人手不足を助長しています。中国政府としてもこの課題を解決すべく、国家戦略「中国製造2025」で「高度なデジタル制御の工作機械・ロボット」を重要項目のひとつとしており、産業用ロボットでは「自主ブランドの市場占有率」を2025年に70%にすると、具体的な数値目標を掲げて取り組む姿勢を見せています。
人に代わる労働リソースとして”ロボット”への期待が、官民問わず高まっている国内の”待ったなし”事情があります。
☆「ラストワンマイル」のリソースを確保せよ
中国ロボット市場は、2019年上半期に42億5000万ドルの規模となりましたが、特筆すべきはサービスロボット市場が、その内22億ドルを占め、前年比で約33%伸びている事です。WRC2019北京での各社展示も、「産業ロボットからサービスロボットへ」シフトをチェンジしていることが、見て取れました。
特に「ラストワンマイル」を担う「自動配送ロボット」は、各社展示のメインを飾っていました。
公道走行が前提の車両がたくさん開発されており、展示されたデモ映像を見る限り、実際のテストも公道で行われているようです。道路交通規制が厳しい日本では、実証実験すら許可が下りないと思いますが、さすが国家戦略の重要項目、何でもチャレンジできそうな勢いを感じました。
北京在住の弊社男性従業員に話を聞くと、彼の家庭の”食材購入”は、スマホアプリから発注して、自宅へ配送してもらうサービスで用が済んでしまうため、リアル店舗で買い物することを、しばらくしていないと証言していました。
フーマーをはじめとする”ニューリテール”と呼ばれるスーパーマーケット兼EC倉庫や、マクドナルドといったファストフードチェーンが、30分以内で自宅に届けてくれるデリバリーサービスを次々展開し、どんどん配達需要が拡大する中で、配送人の奪い合いに発展し、他の労働市場にも「人出不足」と「賃金上昇」という影響を与えています。
この問題への解決策、人に代わる「ラストワンマイル」のリソースとして”配送ロボット”に大きなニーズがあり、展示が集中したのも当然の成り行きといえます。
>次回へ続きます。