米国ストアコンパリゾン_”BOPIS”(ボピス)取り組み

 株式会社エイジス、CvS事業部の武田です。
 前回に引き続き、米国流通事情をレポートします。

<リアル店舗のサービス進化>
 米国では、ICT技術の浸透、とくにECサービスへの投資が非常に著しいと感じました。リアル店舗の多くは、ネット販売も併せて展開しており、なおかつ宅配便以外の方法で、商品をお客様にお届けする”ラストワンマイル”を創意工夫しています。

 ネット注文し、店舗で受け取るサービスのことを「Buy Online Pickup In Store」略して”BOPIS(ボピス)”と言い、米国の大手チェーンストアは、新店増に頼らず、BOPISのICT強化によって、既存店売上を大きく増やしています。

 ウォルマートではだいぶ以前より、BOPISが存在していました。
 しかし、せっかくネットで事前注文したのにも関わらず、店舗受け取りの段階で、専用カウンターで長時間待たされる事態がしばしば発生し、利便性がいまひとつでした。

 そんなお客様の不満を改善するため、カウンターから、ピックアップロッカーへと受け取り方法を変えていきました。

 今回行ったウォルマートには、ピックアップロッカーより更に進化した、「ピックアップタワー」なる巨大な構造物が、店舗内にそびえ立っていました。高さは16フィート、約5mもあります。

ウォルマート”ピックアップタワー” 大きいです・・・。

スマホをかざして操作すると・・・。

商品が出てきます。

 取り出し口近くにスマホのQRコードをかざすと、数10秒で商品が運ばれて来ます。待ち時間無く、スムーズに商品を受け取れる画期的なシステムでした。

 amazonも負けてはいません。「amazon fresh pick up」は、駐車場で商品を受け取ることが出来るサービスです。担当者が、車両のトランクまで商品を運んでくれるので、お客様自身が重い荷物を運ぶ必要がありません。

amazon fresh pick up ドライブスルーのような感覚でしょうか。

amazon fresh pick up カウンター。駐車場以外でも受け取り可能です。

ピックアップカウンターの横には、返品専用BOXが完備。さすが返品王国アメリカです。

 日本でネット販売というと、宅配便のイメージがほとんどだと思います。最近は日本でも宅配ロッカーが、マンション専用だけではなく、駅やコンビニ、小売店内外に設置されているのが目立つようになってきました。

ORDER PICK UP ノードストローム。

ORDER PICK UP LOCKERS ホームデポ。

 いつ来るかわからないまま、自宅で時間を無駄に過ごすよりは、能動的にピックアップしにいく方が、有意義な時間の使い方であると考える人が増えれば、日本でも広く受け入れられるのではないでしょうか。

<まだまだ進むリアル店舗のICT化>
 
 ネット注文だけではなく、店舗へもICTが浸透しつつあります。
「Scan Bag Go」はSM最大手クローガー系のスーパーで採用されています。

Scan Bag Go クローガー 日本でもイオン系スーパーやトライアルなどの一部店舗で見られるセルフスキャンシステムです。

  右側にかかっている専用端末で、欲しい商品のバーコードを「Scan」そのまま「Bag」へ。「Go」する前には、レジは通らないといけませんが、端末データとレジを同期して決済を行うだけです。
 慣れてレジ待ちがないストレスフリーを知ってしまえば、通常レジへは並べなくなるのでは、ないでしょうか。

 同じくクローガー系の「QFC」というスーパーでは「EDGE Shelf(デジタルシェルフ)」なる商品棚があります。
 マイクロソフトと提携してテスト導入をしており、1店舗のみの展開でした。

EDGE Shelf(デジタルシェルフ)QFC。上段2段のドリンク下のカラフルなShelfが液晶パネルになっている。

 一見すると、何がどうなっているか判りづらいですが、紅葉らしき模様が描かれている一面が液晶パネルになっています。価格表示だけでなく、カラーで演出された動画も流れていました。

定番棚プライスカードEDGE Shelf。わざわざ”黒”で”定番棚を演出”しているが・・・。

 ドリンクのエンド展開での「EDGE Shelf」は、棚のパネル全体が、カラフルに一つのアイテムに彩られ、演出されていましたが、定番ゴンドラは、近くで見ないと一つの繋がった液晶パネルで構成されているとは分かりません。セール品は売価表示を赤に変えて、注目させていました。

インターバルで動画が走り、売価表示からきらびやかなコマーシャルに変化する。

 また「EDGE Shelf」は「Scan Bag Go」と連動させることが出来ます。
「Scan Bag Go」でリスト化した商品に店舗内で近づくと、「EDGE Shelf」が反応して、棚の液晶パネル演出が変わるように仕掛けがされています。

<まとめ>
 ICT、EC、IoTの進化によって、買物は多様化しています。
 便利さや手軽さからネット販売に偏って来ているのでは、と思っていましたが、
「どうも、そうでもないのかな」とアメリカで気付かされました。

 2017年にネット販売最大手のamazonが「ホールフーズ・マーケット」という自然食品スーパーを買収しました。
 店舗があればamazon locker(もちろん返品対応できる)も設置でき、amazonオリジナル商品(Fire tabletなど)も、店舗で現物を見せて販売することが出来ます。

 amazon prime会員は、ホールフーズで買い物する際は、会員特別価格で購入でき、リアル店舗でもprime会員の恩恵を受けられるようになっています。
 ホールフーズのPB商品は、amazonで取り扱いが始まり、早くも人気商品となり、確実に顧客拡大(prime会員増加)に成功しています。

 リアル店舗のキャッシュレス決済は、システム導入やカード手数料もあり、巨額な投資となります。
 しかし、キャッシュ決済より、明らかに時間が短縮出来る為、結果的にその分人件費を抑えられます。
 その人件費が浮いた分の経費を、どこに回せるのかが重要になります。

 今回の米国視察では、「デジタルは作業を減らす為(省人化)ではない」という事を学びました。
 ICTはインフラ整備ではなく、消費者が便利だから、買物の手助けになるからこそ、取り組んでいるのです。
 今はスマホやカードが普及し、誰もがデジタルに触れられる時代になりました。
 今、まさに「どれだけデジタルで武装できるか」が、他社との差別化になります。

 ネット販売は便利ではありますが、このEC時代にもお客様は店舗に来てくれます。
 「何の為に来ているのか」
 ここに次に繋がる答えが隠されていると考えます。

以上